2010年8月23日月曜日

初戦 VS 名古屋家庭裁判所の陣 ③ 初戦敗退(泣)

 ついに2学期。新学期早々に幼稚園のバザーで先週まで幼稚園に詰めっ放しで、今週からはいよいよ本格的に荷造りモードに突入です★ 引越しを来週の月曜日に控え、だんだん増えていくダンボールに囲まれてで暮らしています。公団の3LDKに住みながら、なぜか6tトラック2台分の荷物で、引越し費用も馬鹿になりません。できるところは自分でやってなるべくコストを抑える方針ですが、果たして荷造り間に合うのか? ドキドキです。

 うちのハニー姫は、最近「ブロージット玻南姫」と名前が変わっています。「え? ブロージット?それって、ドイツ式の乾杯だよね?」と思われた方、いい線行ってます(^0^)v。
 うちのブロージット姫、ちょっとお利口になってきて、「これ、流しに入れてきてね」と頼むと、いそいそと流しに運んでくれます。そして・・・・ブロージットって感じで、勢い良く流しに投げ込むのです。それが、硬いマグカップだったりすると・・・言わずもがな。流しの中のお茶碗やお皿の類は、これが勢い良く割れていくんですよね、しかも新しかったりセット物だったりするものから優先的に(泣)。うちの家族のお茶碗は全員が一人2個づつ全部で14個ありましたが、今は家族全員の分を合わせて3個しか残っていません。
 そこで、我が家のブロージット玻南姫に渡すコップは百均のプラコップのみ、という暗黙のルールが出来上がってしまいました(百均のプラコップは、他よりも軽いから)。お姫なのに百均・・・。なんか納得できない母です。
 ・・・しかし、彼女の凄さはそれだけにとどまらず。お買い物で、いそいそと勝手に子供用買い物カートにいろいろ入れてきて「あっ(ほめて)」と報告する姫。ある時「今日はいらないから、そこに返してきて」というと、胡瓜の袋をつかみ山の前に行き、いきなり勢い良くブロージット!!!・・・急いで取り押さえましたが、「何がいけないのよ!?」と言わんばかりに怒りたくるブロージット玻南姫。まったく、5人目にもなるといつ何時も女の子であっても油断してはいけないと痛感しました。

 そんな油断できない妹に比べ、三男の愛世。車に乗っていて「お母さん、今、バスにかわいい子が乗っていたよ。お目目がクリクリって大きい子」「(朝一緒に幼稚園に登園する玻南を見て)お母さん、ハニーちゃんかわいいねえ」と「お前が『かわいい』だろうっ!」と突っ込みたくなる発言が多発。穏やかで争いを好まず、親和的な愛世と、何事にも徹底して激しい玻南姫。なんか、間違ってるかも・・・と不安がよぎります。
             *      *        *
 さて、市役所とのやり取りではなんともしっくり来なかったのですが、それはそれ、これはこれ、と家庭裁判所の審判には「もしかしたらOKになるかも」なんて期待して待っていました。とにかく、うちのPCじゃ変換も容易だし、携帯だって出るし、何せ裁判所のPCでも印字されているくらいだし。簡単な字だし。後は親の心情でアピールして、「お代官様よろしくお願いします。」って気分でしたから。浅はかでしたね、本当に。
 
 そして、それはある寒い冬、多分木曜日の午後、突然やってきました。
 幼稚園から帰ってきて少しすると、ピンポーン♪とインターホンがなりました。確か「裁判所からの特別送達です」とか何とか言われたような記憶があります。裁判所に申し立てはしているものの、精神的にすっかり弛緩し切っていた私は、インターホン越の郵便やさんの言葉を聞いて急激に血中アドレナリン濃度が上るのを感じました。心臓はドキドキして、手が震えました。
 玄関で、受け取りのサインを書き、A4サイズの封書を受け取ると、とりあえずダイニングのテーブルの上に置きました。とりあえずは主人に「届いた」と、メールし、そのまま主人が帰るまで待ちました。

 主人が帰ってきました。主人と二人で封筒を挟んで顔を突き合わせて、誰も聞いていないのにひそひそと言葉を交わしました。

「来たねェ」
「うん、来たねえ。」
「意外と薄っぺらいねえ」
「うん。うすいな。薄っぺらいとさ、いい思い出ないんだよね。・・・受験の不合格通知とか?」
「・・・確かに。ヤなこと思い出させないでよ」
「ご~めん。でもさ。」
「うん、わかるけど。」
「どうかなあ」
「どうだろう。」
「・・・・とにかく、開けてみる?」
「そうだよね」

 といった感じで、おっかなびっくりあけました。私たちの血中アドレナリン濃度は上がりっぱなしです。本当に口から心臓が出そうな勢いで、バクバクバクバクと踊っています。

 それでも私は「いい返事だといいな♪」くらいに思っていました。どっちかって言うと、帰ってきた答案用紙の点数をどきどきしながら見るような気分でした。

 すると、以下の文面が目に入りました。



 平成20年(家)第3523号 市町村長の処分に対する不服申し立て事件
           
            審判
 本籍 (省略)
 住所 (省略)
 申立人  矢藤仁 昭和(略)年(略)月(略)日生
      (以下「申立人仁」という。)
 本籍・住所 申立人 矢藤仁に同じ
 申立人  矢藤清恵  昭和(略)年(略)月(略)日生
      (以下「申立人清恵」という。)

           主文
 申立人両名の本件申し立てをいずれも却下する。

           理由

第1 申し立ての趣旨および実情

 申立人は平成20年12月8日、名古屋市東区長に対し、二女玻南(はな)の出生届け(以下「本件出生届」という。)を提出したが、戸籍法50条2項に定めのある子の何用いる文字以外の文字を使用した名であるとして受理されなかった。しかし、「玻」はワープロ入力等でも難なく変換・表示される一般的な文字である上、古来より、瑠璃、玻璃と七宝のひとつに数えられる宝玉の一つであり、日本人の心に根ざしたもものである。また、「玻南」は、姉である「瑠都」と対をなすものであり、申立人両名にとって大切な宝玉であることを示す「玻」と、暖かく皆に囲まれた中で育つ「南」を指すものであって、次女が、家族みんなが待ち望んだ大切で、愛しい宝玉であるという思いが込められており、どちらの字がかけても、申立人両名の二女に対する深い思うが込められた名前になり得ない。このように、二女の名としては、「玻南」以外ありえないことや、「玻」は、日本人の心に根ざし、かつ常用平易な文字であることからすれば、本件出生届けは受理されなければならないものである。
 よって、名古屋市東区長の本件出生届の不受理処分に対し不服を申し立てる。

第2 当裁判所の判断

1 一件記録によれば、平成20年11月23日、申立人両名との間に二女が出生したこと、申立人仁は、同年12月8日に名古屋市役所に本件出生届を提出したこと、同区長は、本件出生届の子の名に使用されている「玻」の文字が戸籍法50条および施工規則60条に規定する子の名に用いることができる文字以外の文字であることを理由に本件出生届を受理しなかったことが認められる。

2 ところで、子の名には、常用平易な文字を用いなければならないとされ(戸籍法50条1項)、常用平易な文字の範囲は、法務省令でこれを定めるとされているところ(同条2項)、」法務省例である戸籍法施工規則60条は、常用平易な文字とは、①常用漢字表(昭和56年内閣告示第1号)に掲げる漢字、②別表第二に掲げる漢字、③片仮名またはひらがなのいずれかと定めているから、同条各号のいずれかに該当すれば、当該文字を子の名に使用することができる。もっとも、同条各号に該当しない文字であっても、家庭裁判所は、心理手続きに提出された資料、高知の事実に照らし、当該文字が社会通念上、明らかに常用平易な文字と認められるときは、当該市町村長に対し、当該文字を子の名に使用した出生届の受理を命じることができると解される)最高裁判所平成15年12t浮き25日決定。民集57巻11号2562頁参照)。
 これを、本件出生届に申立人両名の二女の名として記載された「玻」の文字について検討するに、まず、「玻」の文字が、社会通念上明らかに常用平易な文字と認められるか否かを検討する。
 この点、申立人両名は、「玻」の文字は、ワープロ入力などでも難なく変換・表示される一般的なものであると主張するが、ワープロ等で「は」を入力して変換した場合、すべてのソフトで一回で「玻」用例としては、「玻」に変換されるわけではないことが認められる。また、講談社「新大辞典」などの辞典に掲載されているが、その用法としては、「玻璃」のみであり、同単語も一般的に使用される単語とは認めがたいし、また、一件記録によれば、「玻」の文字を使用するb氏や地名等も多いと言うことはできない上、その他同字が社会通念上明らかに平易である文字であることを認めるに足りる的確な資料はないこと(なお、平成21年1月17日付の朝日新聞の報道によると、現在、文化審議会国語分科会の漢字小委員会は、常用漢字表の見直し作業をしているところ、日常よく使われる漢字として追加される191字に「玻」の文字は挙がっていないことが認められる。)に照らすと、「玻」の文字が、社会通念上、あきらかに常用平易な文字とすることはできないといわざるを得ない。
 そうすると、本件出生届を不受理とした名古屋市東区長の処分は、違法または不当とはいえないから、、申立人両名の本件申し立てをいずれも却下すること(なお、申立人清恵については、本件出生届をしておらず、申し立て権ないし本件申し立ての利益があるといえるか疑問があり、申し立て権などがない場合には本件申し立てが不適法となるし、仮に、もうしたてけんなどがあるとしても、上記の通り、本件申し立てには理由がないことになるから、同人本件申し立ても却下を免れない。)、主文の通り審判する

 平成21年1月26日
    名古屋家庭裁判所
     家事審判官   西田政博


 たったこれだけの短い文章でした。
 一番最初に「却下する」の文字が目に飛び込んできました。この文字を見たときには、子供の受験で不合格通知を受け取ったときと同じくらい「え?なんで?? どうして?」という気分でした。

 文面は平易で、一度読めば、裁判官の言いたいことが良くわかりました。「つまり、①ワープロ変換で簡単にできない機種がある②辞書で、「玻」の用例が少ない。③氏・地名が少ない④文化審議会国語分科会の漢字小委員会の見直し候補に挙がっていない。④同じ字の申し立てをした名古屋市瑞穂区の夫婦も棄却されているということでした。

 これを読んだとき、私はひどく落胆して、「駄目なんだ。法律の壁は厚い」なんて、ガックリ落ち込み、「これから、玻南の漢字はどうすればいいの??」なんて、目の前真っ暗な気分でした。
 一方、主人は「・・・使われていないって言うんなら、実際の使用例を集めてみたらいいんじゃない? 氏や地名も。ワープロ変換簡単にできないって言うんだったら、コジマ電気とかにいって、実際どのくらいの数が変換できてどのくらいの数が変換できないのかを調べたらはっきりするんじゃない?」と冷静にいいました。
 
 普段は優柔不断ではっきりしなくて、家の中の98%は私任せで肝心なことは全部私任せの怠け者な主人です。無駄に私の周りにいる暑い夏のとき、やたらと家中に変な棚を作って死蔵品を増やすとき、何回言っても冷蔵庫に適当に食べ物を突っ込んで死角を作り結果カビの培養をするとき、たたんだ洗濯物を適当にみんなの引き出しに突っ込んで必要な服の行方不明者を多数出すとき、子供の受験やお稽古で私がいっぱいいっぱいになっているときに「だから僕は嫌だって言ったのに」と「自分は苦労したくない」発言が出るとき、何でか油断できないお出かけのときに限って10年使い続けている色あせたしかも短パンをはいて来ていることに目的地で気づくとき、「金城武みたいだろう?」とか何とかいって後退前髪も含めて後ろで縛る痛々しい姿を見るとき、何日もひげをそらずにインチキくさい容貌になっているのに気にしないとき、深夜番組を見て朝起きれない子供みたいなことをするとき。「あ~、本当に離婚したい」と何度思ったか知れないダメダメ主人ですが、このときばかりは主人と結婚してよかったとつくづく思いました。
 冷静に審判書の中身を吟味して、冷静にその可否を判断できる主人がどんなに格好良く見えたか!!!  ・・・結婚して15年以上たって、いまさらながらではあるものの「つり橋理論」で主人が格好良く見え、惚れ直しましたね(笑)。
 そして、私たちの第二ラウンドが始まりました。   (続く)