2009年12月14日月曜日

特別抗告の理由書

平成21年(ラク)第62号


特別抗告理由書 


 最高裁判所御中

               平成21年11月20日




申立人 矢藤仁       
住所 名古屋市東区(以下略)
電話&Fax番号 052-(以下略)
携帯電話 (省略)


申立人 矢藤清恵
住所 名古屋市東区《以下省略)
電話&Fax番号 (省略)
携帯電話 (省略)


 名古屋高等裁判所平成21年(ラ)第86号市町村長の処分に対する不服申し立て却下審判に対する即時抗告事件の決定に対する特別抗告の申立の理由は以下の通りである。





目次

 第1.抗告の要旨


 第2.事案の概要


 第3.申立ての実情


 第4.憲法第14条 平等権と重大な法令解釈違反について


 第5.憲法第13条 命名権、自由権、幸福追求権と平成21年(ラ)第86号「玻」事件における戸籍法の解釈の違反について


第6.児童の権利に関する条約7条1項 児童の出生後直ちに登録され、氏名を有し国籍を取得する権利と申し立て中に子が無戸籍にならないための救済策として「名未定」での出生届を出せることを積極的に周知徹底していないことの違反、ならびに同条約第7条2の「国内法及びこの分野における関連する国際文書に基づく自国の義務に従い、1の権利の実現を確保する」ことと、戸籍法第50条2項の「常用平易」判断の枠組みを曖昧なまま放置し、家事審判とその抗告審が延々と継続する状態の違反について


第7.結論


第8.意見書 愛知教育大学国語教育講座 田中敏夫教授 コピー
   (原本は本件許可抗告(平成21年ラ許39)に添付)



第1.抗告の要旨
①平成15年(許)第37号(以後「曽」事件とする)は「子の名に用いることの出来る文字を常用平易な文字に限定する趣旨にとどまらず、常用平易な文字は子の名に用いることができる旨を定めた(最高裁判所判例解説民事篇平成15年度(下)p860)」が、何をもって常用平易であるとするかは、「審判手続きに提出された資料、公知の事実などに照らし、当該文字が社会通念上明らかに常用平易な文字(最高裁判所判例解説民事篇平成15年度(下)p860)」であるかどうかを検討すると述べるにとどまり、「曽」についての具体的な判断基準は明示したものの、それは「曽」についての基準を示したに過ぎない。その後、2004.5.6横浜家庭裁判所「獅」、2004.6.10大阪家庭裁判所「駕」、2004.6.18名古屋家庭裁判所「毘」、2004.6.23広島高等裁判所平16(ラ)81号「瀧」、と、個々に検討され認められてきたが、その判断基準となる検討枠組みは明らかになっていない。
そこで、私たちは、何が常用平易かを示した戸籍法52条2項が常用平易とした常用漢字・別表2がその基準になると考え、とりわけ人名用としてのみ認められている別表2と当該文字「玻」とを比較検討することと、名古屋家庭裁判所が提示した条件を検討することにより、「玻」が別表の2と比較しても、また近年認められた「獅」「駕」「毘」「瀧」と比較しても、遜色なく明らかに常用平易であることを証明したが、本件名古屋高等裁判所は合理的な判断基準を示すことなく「それだけでは不十分」とし、「同じ構成要素である王偏の文字にも、構成要素は簡単だが常用平易でない文字もある」「広くあまねく国民に知られていない」という、「常用平易」について戸籍法51条の立法趣旨に照らして合理性を欠いた過剰な要件を課すものとなっており、また、別表2にの文字には課されていない基準を用いており、著しく差別的な法解釈・決定となっており、憲法14条に違反・無効である。
大阪高等裁判所は、常用平易について、判断の基となる戸籍法51条1項の立法趣旨に立ち返り、「曽」事件で述べるところの「明らかに常用平易」な文字か否かを検討するに当たっての基本的枠組みを、平成19年(ラ)第486号(以後「穹」事件とする)および平成19年(ラ)第252号(以後「祷」事件とする)で定立した。
「穹」・「祷」両事件ともに、共通の基本枠組みを用いて当該文字の常用平易性を考究した後、必要に応じ個々の事情を検討する方法を用いている。
本件名古屋高等裁判所はこの基本枠組みを用いず、また常用平易の判断基準を明らかにすることもなく決定を下しているが、本件当該文字「玻」を、定立された基本的枠組みによって審判手続きに提出された資料、公知の事実などを考究した場合、「玻」が「穹」と同等の基準を全て備えており、「明らかに常用平易」であることは明白である。
時代の変化、国民意識の変化などによって何が「常用平易か」が変わり(「曽」事件理由書)、同じ枠組みであっても判断が分かれることもあるが、「穹」・「祷」両事件は平成20年3月18日決定、本件「玻」事件は平成21年10月26日決定と、決定日も近接しており、この間国民意識など、常用平易の判断が変わるような大きな変化は確認できていない。
従って、本件名古屋高等裁判所決定は、その法解釈と判断において憲法第14条平等権に違反しており、違憲・無効である。

②憲法第13条で保障されている命名権、自由権、幸福追求権と戸籍法50条1項は、互いに補完しあうことで、命名される子の幸福を守るものであり、どちらも欠かすことのできないものであるが、優位性から考えるに、戸籍法50条1項は親が命名するに当たって一つの原則を示すにとどまるべきものであって、規制は戸籍法50条1項が防止しようとする弊害を生じる事態を明らかに想定することが出来る場合にのみ行使されるべきものである。
したがって、常用平易の解釈はその目的に適う範囲で考究されるべきであり、常用平易の判断が、名古屋高等判所が本件審判で求める「広くあまねく積極的に知られていること」である必要はなく、原決定は、根拠のない合理性を欠いた過剰な要件を課すものであり、憲法第13条で保障されている命名権、自由権、幸福追求権に対し、違憲・無効である。

③戸籍法50条1項にまつわる裁判が長期化することを、私たち自身今回身をもって知ったが、その間、当該児童が無戸籍児にならないための救済策として「名未定」で出生届をすることが出来、判決に不利になることはないことは、今に至るまで知らなかった。
裁判所もしくは戸籍掌管者は、申し立て中、子が長期間無戸籍の状態になることを回避するために、「名未定」の届けが救済措置としてあることを、積極的に案内する義務がある。それを行わないでいる状態は、児童の権利に関する条約7条1項 「児童の出生後直ちに登録され、氏名を有し国籍を取得する権利」に違反しており、直ちに、救済措置についての案内をする責任部署と、案内の明確な内容を決めることを求める。
また、本件家事審判がこんなに時間がかかっていること自体が、児童の権利に関する条約の第7条に違反しており、その原因は戸籍法第50条にある。
この条約によれば「児童は、出生の時から氏名を有する権利」があるはずなのに、戸籍法第50条が「常用平易」などとあいまいな表現にとどまり、しかもその「常用平易」を戸籍法施行規則に押し付けてしまってるものだから、家事審判とその抗告審が延々と継続し、その間は、児童を「名未定」あるいは無戸籍にせざるを得ず、「氏名を有する権利」が阻害される。
これは同条約第7条2の「国内法及びこの分野における関連する国際文書に基づく自国の義務に従い、1の権利の実現を確保する」ことを、少なくとも戸籍法第50条に関しては怠っている。

第2.事件の概要
 抗告人である私たち夫婦は妊娠している子供が女の子であるとわかった平成20年7月から夫婦、家族で相談して「玻南」と命名し、次女の誕生を待ち望んだ。
名前の由来は、聖書に出てくる模範的女性「ルツ」「ハンナ」にちなんだ姉「瑠都」にならって「玻南」とした。また、漢字も仏教の七宝の中の「瑠璃、玻璃(経典の中では絶えず対で出てくる)」から取り、姉を「瑠都(宝の周りに沢山の人が集まる、の字義)」当該児を「玻南(皆に囲まれた暖かいところに来た宝、の字義)」とした。
ちなみに、玻南は待望の次女であり、長女「瑠都」の誕生後、玻南を迎えるまでに男児3人の出産と2回の流産を経ており、私たちにとって玻南は、まさに家族みんなに待ち望まれていた宝である。
 同年20年11月23日次女「玻南」誕生。
 同年12月8日抗告人である父親の矢藤仁が名古屋市東区役所に次女の名を「玻南」とした出生届を提出したところ、同区長から、「玻」の文字が戸籍法施行規則60条に定める文字でないことを理由に不受理処分がなされた。
次女の名前には「玻南」しかないと考えていた抗告人が戸籍係に相談したところ、家庭裁判所に申し立てをする方法があることを教えてもらい、
同年12月10日戸籍法121条に基づき不服を申して、子の名に「玻」の文字を使用した出生届の受理を命ずる旨の審判を求めたが、
平成21年1月26日家庭裁判所で棄却
同年2月20日抗告するも
同年10月27日棄却。
棄却理由に上記の憲法違反を認めた抗告人は原決定の破棄と相当な裁判を求め、特別抗告をした。


第3.申立ての実情
「玻」は「戸籍法50条1項が子の名には常用平易な文字を用いなければならないこととしたのは、子の名に日常使われない文字や難解な文字が用いられるときは、これによって命名された本人のみならず、他者にも社会生活上の不便や支障が生ずるおそれがあるため、これを防止する趣旨(である。)」(最高裁判所判例解説857頁)とする戸籍法50条立法趣旨にかなった文字であり、またこの判例基準に照らし合わせても明らかに常用平易である。
 
①「玻」を氏に使用している人たちに対するアンケート調査(甲2、3)より、社会生活を営む上で不便、支障はほとんどなく、戸籍法立法趣旨に反する事実はまったく確認されていない。むしろ「コミュニケーションのきっかけになる」「良い文字なので、使えないのはおかしい」といった意見が寄せられている(甲2.3.4.5)。この文字は戸籍統一文字(戸籍統一文字番号234410(甲51))でもあり、この文字の使用によって戸籍窓口が特に混乱したという事実は認められていない。
また、次女もこの一年間「玻南」として生活を送ったものの、不便不自由が生じたことは一度もなく、出生の挨拶メール(甲1)、出産内祝いの名入れ(甲11,12,13,19,20,21)、教会での命名の儀式祝福証明書(甲14)お祝いのアルバムの名前入りアルバム、保険証(甲6)や乳児医療証(甲16)、年賀状(甲17)、診療予約表(甲18)診察券(甲22,49,50)、図書館の貸し出しカード(甲23)予防接種(甲44)、郵便貯金通帳(甲15)、学資保険の保険証(甲7)から、ダイレクトメール(甲43、46)名古屋家庭裁判所で出してもらった事件継続証明書(甲8)当事件審判書(甲9)名古屋市の意見書(甲10)など、嬉しいものから嬉しくないものにいたるまで、社会生活においてまったく支障がなかったことからも、戸籍法50条設立趣旨にかなう明らかに常用平易な文字であることがわかる。最新で言えば21年11月2日付け読売新聞の朝刊(甲52)に始まり、11月4日には毎日新聞(甲53.)、朝日新聞、中日新聞(甲54.)と掲載されており、11月4日CBCテレビ、TBSテレビでもこの申立てのニュースの中で「玻」は誤記なく表記されている(必要でしたら、録画DVDを提出しますから、お申し付けください)。

②「玻」は、
「JIS第2水準の文字である。平成16年の規則改正の際にも、JIS第1水準第2水準の文字は、社会一般において尊重され、幅広く用いられていることとの一般認識があったものであり、また、ワープロや携帯電話などの変換においても大半のコンピューターに搭載されているところから、情報通信手段において、より一層、その重要性・汎用性が増すことが期待できるものであって、社会生活を送るに当たってのコンピューターなどの画面上の表記や、国民の多数が所有している携帯電話を利用したメール機能による送信などにもまったく不都合がない。
 戸籍事務処理の観点から見ても、本件文字は、戸籍統一文字にも登録されているから、今後、子の名にこれが用いられても、審査の困難化や誤字の記載といった危険性はなく、戸籍事務のコンピューター化に支障をきたすことはおよそ考えられない。」と平成19年(ラ)第486号事件で大阪高等裁判所が判じている基準をみたす。  
事実、平成19年12月の時点で全国シェア51.2%のDOCOMOに「玻」の検索結果について問い合わせたところ、
「ドコモ携帯最新機種16台のうち、シャープ、パナソニック、NECの4社の製品全11台で『玻』は『は』の入力だけで候補に出る。残る富士通製の5台では『は』のみでは検出できなかったが、『はり』で入力すると『玻璃』と出る。いずれの機種も、コードを入力しての特別な検索は必要なかった」との回答を得ている。
(平成20年2月9日ドコモインフォーメーションセンター 受付:(非公開)さん、回答:(非公開)さん)
また、オムロン社の日本語変換ソフトを使用しているソニー、京セラ、三洋の携帯電話は、電話会社に関わらず『玻』は『は』の入力だけで候補に出る。
国内で使用されている携帯電話機器の7割以上を上記の携帯電話製造会社で占めていることから、ドコモの機種に限らず、国内の携帯電話のほとんどの機種で「玻」が簡単に検索でき、携帯電話の変換においても平易であることが分かる。
とりわけ、低年齢の子供を対象としているキッズ携帯でさえも「は」の検索で「玻」が変換候補に挙がることは、平易という意味で特筆すべきである。

③読み書きについて、名古屋高等裁判所は「これを他の漢字から類推して「は」と読むことが容易であり、他の裁判例で認められた漢字のほとんどに比べて画数が少なく、その構成要素である「王」も「皮」も平易な漢字であることは認められる(本件審判書5ページ)」と認めている。

④「玻」に画数が9画と少ないことについても名古屋高等裁判所は「画数にいついても他の裁判例で認められた漢字のほとんどに比べて画数が少なく(5ページ)」と認めている。事実、次の表1の通りである。
表1画数別漢字数
一画:9
二画:40
三画:81
4画:158
5画:250
6画:357
7画:429
8画:694
9画:950 →「玻」
10画:1213
11画:1256
12画:1301 13画:1169
14画:1070
15画:1065
16画:927
17画:710
18画:537
19画:506
20画:335
21画:265
22画:203
23画:146
24画:107 25画:55
26画:34
27画:25
28画:19
29画:9
30画:5
31画:1
32画:2
33画:3
34画:1
修館書店「新漢語林」
総画索引よりカウント
         
⑤「玻」は本件名古屋高等裁判所裁判官もその構成要素である「王」も「皮」も平易な漢字であることは認められる(本件審判書5ページ)と認めており、いずれも単純かつ一般的なもので、同じ構成要素からなる漢字も多数あり(表2参照)、
表2「玻」と構成要素が同じ常用ならびに人名用漢字の一例
王(たまへん、おうへん)の漢字 構成要素に皮がある漢字
王、玉 珍、玪、珠、班、球、現、琢、理、琉、瑛、琴、琶、斑、琵、瑞、揺、瑠、璃、環、璽、 皮、彼、披、波、疲、破、被、

偕成社「下村式小学漢字学習辞典」より抜粋
口頭での説明も「王偏に、皮膚の皮」といえば十分であり、実際、内祝いの名入れでの説明も、当時小学二年生の次男への説明もこれで事が足り、誤記が生じたことはなかった。

⑥「玻」の字義は「天然ガラス。また、仏教で、七宝の一つである水晶のこと」であり、古くは出雲日御崎天神宮社記の紀元61年11月15日の記録にある名前に使われ(甲24)、琉球の王族の名前にも使われ(甲3)、正倉院の宝物の名前としても使用されており(甲25)、また日本人にもっとも広く根付いている仏教では七宝の一つとして経典の中にも出てくる。(乙4.5.)。
以上の通り、「玻」は古来より用いられており、その使われ方は、人名、宝物名と、日本人にとってとても好ましいものに使われている。その意味は美しく高貴なものであって、諺にも「瑠璃も玻璃も照らせば光る(つまらぬものの中に混じっていても、素質の優れた者は光を当てれば輝いてすぐに分かる)」とあり、このように美しい意味と響きを名前に使用したいという需要は実際にも多い。「玻」は身の回りにも多数存在しており、とりわけ、絵画、彫刻などの芸術作品の表題や、文学作品、雅号、ペンネーム、ハンドルネームなど幅広く使用されている(別紙9,甲27,28,別紙10,甲27,28,別紙7,甲29,30,別紙12参照)。

⑦常用性については、2008年のベストセラー小説「瑠璃でもなく玻璃でもなく(唯川恵 著 集英社)」の出版部数が(非公開)部に達し(集英社広報部 (非公開)様 平成12年11月10日15時電話にて回答)、書店での平積みはもとより、電車の中吊り、新聞での中吊り広告、テレビ、雑誌などでの紹介と、巷に溢れていたことは記憶に新しい。今年の直木賞受賞作品は三部作の第三部であったが、その第二部「玻璃の天(北村薫著 2007年 文芸春秋)」も9万8千部出版(文芸春秋 (非公開)様11月11日お電話にて回答)され、前述の「瑠璃でもなく玻璃でもなく」同様書店での平積み、電車の中吊り広告(甲48)、新聞広告(甲47)、テレビ、雑誌などでの紹介と、「玻」は巷に溢れている。
また、本文の中に「玻」が出てくる10代の少年少女向けの小説やゲーム小説の発行部数もいくつかを例に挙げると、
出版社 題名と証拠番号 発行部数
角川ビーンズ文庫 彩雲国物語(全18巻)
(甲28) (非公開)万部
角川書店 (非公開)様 11月9日回答
講談社X文庫 都南の翼 (甲28) (非公開)万部
講談社文庫 11月9日回答
講談社X文庫
玻璃色の迷宮(甲28) (非公開)部
講談社文庫 11月9日回答
講談社文庫
講談社X文庫 十二国記 風の万里 黎明の空(甲28) (非公開)万部
講談社文庫 11月9日回答
講談社文芸文庫 測量船(甲28) (非公開)講談社文庫 11月9日回答
これらの小説(中学生の長男、高校生の長女が読んでいた上記の小説等の中から出てきたものであって、高等裁判所が言う「非常な努力」で見つけたものではない。そもそも意図して一つの文字を探すのに書籍を探したと考えること自体が随分と荒唐無稽な考えである。そんなことで見つけ出すのは不可能である。)だけでも、500万部以上に上る。
 また、今回の申し立てが新聞、テレビに取り上げられ、より一層「玻」が目につくようになった。参考までに、各社の「玻南」の記事の掲載回数、発行部数を示す。共同通信社配信の記事の掲載された新聞の発行部数については、新聞社が多岐に渡るため、割愛とした。
朝日新聞 11月4日夕刊 約330万部 11月11日9時58分朝日新聞社お客様オフィス(非公開)様お電話にて回答
読売新聞 11月2日朝刊
それ以外は割愛 約900万部 2009/11/11 (水) 13:19
読売新聞(非公開)様メールにて回答
毎日新聞 ①11月3日付中部本社版と東京本社発行版朝刊
②同4日付の中部本社夕刊
③同7日付の中部本社愛知県内地域面 ①中部版17万部東京版153万部
②4万2000部
③9万2000部
2009/11/10 (火) 14:52
メールにて毎日新聞の(非公開)様回答
中日新聞
北陸中日新聞 11月4日朝刊11月4日夕刊 2,774,585部
10,328部 2009/11/10 (火) 14:50
中日新聞・(非公開)様メールにて回答
これだけでも合計すると、1700万部に「玻南」の記事が掲載され、多くの国民の目に留まっている。またこの記事は各社のインターネット版でも掲載されている(甲55)。
11月4日付け中日新聞を始め各紙やインターネットで募集したアンケート(甲56)にも、募集開始初日で160件のメール、その後メール数は増え、郵便も併せると、その数は合計386(有効回答のみ)となり、漢字小委員会の意見募集に寄せられた意見の件数の約2倍であり、国民の「玻」の申し立てに関わる関心の高さが伺える。
また、即時抗告の時点でのインターネットヒット件数は次の表3が示すとおり、別表2の81.3%、168字が「玻」より少なく(甲31)、更に「玻」と比べて桁違いに少ない字(100万以下)が21字(甲32)あることが分かった。この中には、漢字変換ができなかった別表2の文字は含まない。今回家庭裁判所が審判理由に採用した、「該当文字を含む氏・地名の数」、「熟語数」を「玻」と別表2の字とを比較し、ヒット件数が200万以下氏、地名の数が「玻」よりも少ない、の二点を満たすものだけを表にした。
表3「玻」と別表2の漢字の使用頻度一覧表
漢字 ネットの
ヒット件数 氏の
表示数 地名の数 熟語
学研 漢字源調べ
玻 6,660,000 3 1 玻璃、玻里非(ボリビア) 甲32
娩 548,000 0 0 分娩、娩痛 甲33-①
沌 803,000 0 0 混沌、沌沌 甲33-②
楕 427,000 0 0 楕円 甲33-③
閠 503,000 0 0 閠位、閠月、閠日、閠年、正閠 甲33-④
綸 534,000 0 0 綸言、綸子、重綸、収綸、綸言如汗 甲33-⑤
諄 732,000 0 0 諄諄 甲33-⑥
斡 909,000 0 0 斡旋、斡流 甲33-⑦
誼 903,000 0 0 古誼、情誼、友誼 甲33-⑧
浬 1,650,000 0 0 なし 甲33-⑨
燎 1,650,000 0 0 6個以上 甲33-⑩
牒 1,950,000 0 0 書牒、通牒、譜牒 甲33-⑪
稟 1,900,000 0 0 6個以上 甲33-⑫
穰 1,360,000 0 0 豊穰、穰歳、穰穰 甲33-⑬
繍 1,100,000 0 0 6個以上 甲33-⑭
纂 1,860,000 0 0 6個以上 甲33-⑮
臆 1,580,000 0 0 6個以上 甲33-⑯
痩 1,900,000 0 0 6個以上 甲33-⑰
舷 1,740,000 0 0 舷側、舷梯、舷舷相摩 甲33-⑱
滉 1,370,000 0 0 滉瀁 甲33-⑲
櫂 1,250,000 0 0 櫂歌、櫂舟 甲33-⑳
拶 1,080,000 0 0 挨拶、拶手 甲33-21
惺 1,550,000 0 0 惺惺、惺悟 甲33-22
悌 1,850,000 0 0 孝悌、悌友 甲33-23
彗 1,850,000 0 0 彗星、彗掃 甲33-24
堯 144,000 1 0 6個以上 甲33-24
琥 1,460,000 0 1 琥珀 甲33-25
檎 571,000 1 0 林檎 甲33-26
晄 686,000 1 0 なし 甲33-27
これらのことを考慮すれば、「玻」について、複雑ないし難解である、あるいは日常目にする機会に乏しく、字義などが知られていないなどの観点から弊害が生じることは、想定することが困難というべきである。

以上をもって「玻」が明らかに常用平易であることを述べたが、名古屋高等裁判所は⑥⑦については多数の資料、証拠を提出したにもかかわらず、「使用は限定的で多用しているとは言えず」「このような非常な努力なしに「玻」の用例を収集し得ないこと自体が、その常用性の乏しさを示している」としているが、「非常な努力」がなされたという事実は根拠がなく、例示することによって「限定的な使用である」と事実に反した判断をし、平成19年(ラ)第486号「穹」と同じ条件をみたしているにもかかわらず決定が異なる。

また、名古屋高等裁判所の判決文の中で、「同条2項が「常用平易な文字」の範囲を法務省令で定めるように委任したのは、当該文字が常用平易であるか否かは、社会通念に基づいて判断されるべきものであるが、その範囲は、必ずしも一義的に明らかではなく、専門的な観点から検討を必要とする上、上記の事情の変化に適切に対応する必要があることなどから、その範囲の確定を法務省令にゆだねた趣旨であり、戸籍法施行規則60条は、この委任を受けて、専門家の関与などを経て常用平易な文字を限定列挙したものであって、ただ、同条が社会通念上、常用平易であることが明らかな文字を子の名に用いることができる文字として定めなかった場合には、その限りで、戸籍法50条1項の委任の趣旨を逸脱するものとして違法、無効とされ、裁判所において、当該文字を子の名に使用した出生届の受理を命じることができると言うに過ぎず、(原審判の引用する最高裁判所平成15年12月25日決定)、具体的に当該文字を子の名に使用することによって、社会生活上の不便や支障がないかどうかという点が、当該文字を人名漢字として使用することの許否の判断基準となるものではない。したがって、たとえ「玻」を氏に使用している人たちのうちの数人が社会生活上の不便や支障を感じていないものであったとしても、そのことがただちに人名用漢字としての使用が認められるべきことの根拠となるものではない。」と述べている。しかし、そもそもの戸籍法50条の立法趣旨からすれば、社会生活上の不便や支障のないことこそが目的であり、常用平易はその目的を達するための手段に他ならず、常用平易は社会生活での不便支障が生じる可能性ないし蓋然性がどの程度あるかという観点が考究されるべきであり(「穹」平成19年(ラ)第486号大阪高等裁判所)、名古屋高等裁判所の判断は、戸籍法50条1項の「常用平易」について、合理性を欠いた過剰な要件を課すものであり、大阪高等裁判所「穹」・「祷」両事件と比べても私たちに著しく不利益・差別的な決定となっている。


第3.憲法第14条平等権と重大な法令解釈違反について

①本件では戸籍法50条が「常用平易」と認め、またその趣旨に従って検討されて認められてきた「獅」「駕」「毘」「瀧」および別表2と本件当該文字「玻」とを比較することで、「玻」が名古屋高等裁判所の示す判断基準の常用平易を満たしているかどうかを検討した。
・ワープロ変換のし易さについて
実際の変換のしやすさいついて調べたところ以下の通りとなり、「玻」は別表2と同等以上に変換しやすかった。
  別紙1 ワープロ(ウィンドウズXP搭載SONY VAIO標準装備のWord)での変換について「玻」と別表②掲載漢字との比較
①読み入力、変換では候補に挙がらず、地名人名検索での検出が必要であったもの(玻と同様の検索方法が必要であったもの)
凜 塙 奎 崚 峻 慧 彪 悌 惟 悉 惣 慧 挨 撒 撰
昊 晄 晟 晨 淳 滉 煕 燎 燿 猪 甫 祗 祢 穰 蕉
諄 赳 迪 玖 珈       
②一発検索及び地名人名検索では出ず、単漢字でのみ検出できたもの
(玻より一手間余分にかかるもの)
已 戟 拭 擢 暉 殆 漱 瀕 禱 秤 綺 徽 繡
羚 腔 萌 蔣 蠟 詢 醬 颯 驍 鷗 麒 嘉 捷
匡:コウでは一発変換はもちろんのこと、地名人名でも検出できず、単漢字約550のうち398番目に検
され、検出はかなりの困難であった

別表2のワープロ変換できない字
使用機種:ウィンドウズXP搭載SONY VAIO標準装備のWord
    :SHARP 電子辞書Papyrus PW-AT760 スーパー大辞林3.0、及び漢字源
・検索結果を混同しないよう、Wordを赤およびPapyrusを紫にそれぞれを色分けしてある
・wordで検出されないため、似たような漢字で表記を代用してある。
別表2と比較すると、これらの文字は全て字体が異なることが分かる
ト :字音、および意読ともに検出できず。今回はカタカナのトで代用。
喞 :別表の二に掲載されている字体は検出できず、この漢字そのものが電子辞書の手書きパッドでも認識されず、読みの検索を断念した。
厩 :別表二の字体は検出でず。この漢字そのものが電子辞書の手書きパッドでも認識されず、読みの検索を断念した。
噲 :別表の二に掲載されている字体は検出できず、この漢字そのものが電子辞書の手書きパッドでも認識されず、読みの検索を断念。
槇 :マキとしては検出できたが別表の二に掲載されている別表2掲載の土ヘンの字は検出できずこの漢字そのものが電子辞書の手書きパッドでも認識されず、読みの検索を断念
宥 :電子辞書で「名付け」と表示された読であるヒロ、スケは ひろ よしみは一発変換では出ず、地名人名による検索でもヒロのみ検出し、スケは検出できなかった。
屑:別表二の字体が検出できない。電子辞書の手書きパッドでも認識されず、読みの検索を断念
廟:別表二の字体が検出できない。電子辞書の手書きパッドでも認識されず、読みの検索を断念
徠 :電子辞書で「名付け」と表示された読であるキ、ユキ、コ、一発変換、地名人名、単漢字による検索いずれも検出できず、キタルも一発検索及び地名人名検索では出ず、単漢字でのみ検出。
恕 :電子辞書で「名付け」と表示された読であるクニ、クミ、タダシ、ノブ、ノリ、ヒロ、ヒロム、ミチ、モロ、ユキ、一発変換、地名人名、単漢字による検索いずれも検出できなかった。シノブ、ハカル、ヒロシ、ユルスは一発検索及び地名人名検索では出ず、単漢字でのみ検出
揃 :別表二の字体が検出できない。
幗 :キャク・カクとしては検出できたが別表の二に掲載されて手偏の字体は検出できず、この漢字そのものが電子辞書の手書きパッドでも認識されず、読みの検索を断念。
晏 :エンの読みは一発検索及び地名人名検索出ず、単漢字でのみ検出。アンの読みでは一発検索、地名人名及び単漢字でも検出不可
晦 :別表二の字体では検出できない、毎の部分は母ではなかった。電子辞書の手書きパッドでも認識されず、検索を断念。
楢: 別表二の字体では検出できない。別表2の字体は電子辞書の手書きパッドでも認識されず、読みの検索を断念。
樽・墫 :別表2の字体は電子辞書の手書きパッドでも認識されず、検索を断念、また一発検索、地名人名及び単漢字でも検出不可。
櫛 :別表二の字体では検出できない
渚 :別表2にある、点のついたものは一発検索、地名人名及び単漢字でも検出不可。
溢 :別表2にある旧字体?は電子辞書の手書きパッドでも認識されず、検索を断念。また一発検索、地名人名及び単漢字でも検出不可。
焔 :別表2にある旧字体?は電子辞書の手書きパッドでも認識されず、検索を断念。また一発検索、地名人名及び単漢字でも検出不可
煎 :別表二の字体は検出できず。別表2の字体は電子辞書の手書きパッドでも認識されず、検索を断念
煉 :別表二の字体は検出できず。別表2の字体は電子辞書の手書きパッドでも認識されず、検索を断念
琢 :点のついたものは一発検索、地名人名及び単漢字でも別表二の字体は検出できず。
禰 :別表2の字体示へんの字は検出不可。
祐 :別表2の字体示へんの字は検出不可。
禄 :別表2の字体示へんの字は検出不可。
禎 :別表2の字体示へんの字は検出不可。
蓬 :別表2の字体点が二つの字は検出不可。電子辞書にもない。
祁 :別表2の字体示へんの字は検出不可。電子辞書にも載っていない。
顚 :別表二の字体は検出できず。
饗 :別表二の字体は検出できず。
しんにょうの二つ点がつく逢、辻、迄、辿、迦、這、逗、遁、遡、遜は部首索引しても別表検出不能。電子辞書でも検出不能。
・携帯電話での文字変換についての聞き取り調査および具体的な事例については、比較していないが明らかに平易であることは前述の通り。
・読み書き、画数に関して明らかに平易であることは前述の通り。
・別表2と比べて熟語の数が劣るわけではないことは前述の通り。むしろ以下のように、熟語は多数存在する
「玻」の用例(三省堂「大辞林」、岩波「広辞苑」調べ)
玻璃 :仏典の中の七宝の一つ、水晶、ガラス
玻璃器 :ガラスの器
玻璃鏡 :(金属製の鏡に対して)ガラス製の鏡、姿見
玻璃質 :ガラス質
玻璃障子 :ガラス戸
玻璃長石 :カリ長石の一種の鉱物
玻尿酸 :ヒアルロン酸
玻璃白菜 :中華料理
玻球 :ガラスの玉
玻璃板 :平板印刷、アートタイプ。ガラス板を用いることから言う。
鰭玻璃草 :ムラサキ科、コンフリーもしくはシンフィツムの和名。ひれはりぐさ。
玻璃窓 :ガラス窓
玻璃珠 :水晶の玉、ガラス玉
玻璃光沢 :ガラスに似た光沢、水晶、柘榴石などに見られるもの
玻璃の鏡 :浄玻璃の鏡の略称。閻魔大王の持っている鏡で、生前の行いを映す
浄玻璃の鏡 :閻魔大王の持っている鏡で、生前の行いを映す
玻瑰花茶 :ローズティー
東玻肉:トンポーロー、中華料理
・使用頻度、氏、地名の数、単語数についても前述の通り(再掲)、別表2と遜色ない
漢字 ネットの
ヒット件数 氏の
表示数 地名の数 熟語
学研 漢字源調べ
玻 6,660,000 3 1 玻璃、玻里非(ボリビア) 甲32
娩 548,000 0 0 分娩、娩痛 甲33-①
沌 803,000 0 0 混沌、沌沌 甲33-②
楕 427,000 0 0 楕円 甲33-③
閠 503,000 0 0 閠位、閠月、閠日、閠年、正閠 甲33-④
綸 534,000 0 0 綸言、綸子、重綸、収綸、綸言如汗 甲33-⑤
諄 732,000 0 0 諄諄 甲33-⑥
斡 909,000 0 0 斡旋、斡流 甲33-⑦
誼 903,000 0 0 古誼、情誼、友誼 甲33-⑧
浬 1,650,000 0 0 なし 甲33-⑨
燎 1,650,000 0 0 6個以上 甲33-⑩
牒 1,950,000 0 0 書牒、通牒、譜牒 甲33-⑪
稟 1,900,000 0 0 6個以上 甲33-⑫
穰 1,360,000 0 0 豊穰、穰歳、穰穰 甲33-⑬
繍 1,100,000 0 0 6個以上 甲33-⑭
纂 1,860,000 0 0 6個以上 甲33-⑮
臆 1,580,000 0 0 6個以上 甲33-⑯
痩 1,900,000 0 0 6個以上 甲33-⑰
舷 1,740,000 0 0 舷側、舷梯、舷舷相摩 甲33-⑱
滉 1,370,000 0 0 滉瀁 甲33-⑲
櫂 1,250,000 0 0 櫂歌、櫂舟 甲33-⑳
拶 1,080,000 0 0 挨拶、拶手 甲33-21
惺 1,550,000 0 0 惺惺、惺悟 甲33-22
悌 1,850,000 0 0 孝悌、悌友 甲33-23
彗 1,850,000 0 0 彗星、彗掃 甲33-24
堯 144,000 1 0 6個以上 甲33-24
琥 1,460,000 0 1 琥珀 甲33-25
檎 571,000 1 0 林檎 甲33-26
晄 686,000 1 0 なし 甲33-27
 ・常用されている
社会の中で継続的に使用されている「玻」を含む名前の例
・芸名、雅号、ペンネームなど
名前 人物紹介 備考
松本春玻 長崎県大村市在住シルバーコーン大学名誉教授 大村市展審査員
長崎県委嘱美術作家展会員 水墨画家としての雅号 甲26-①
小幡玻矢子 「超節約術」などの 著者 甲26-②
姫野美玻 平凡パンチ1975年2月号掲載グラビアのモデルの名前 甲26-③
石原三玻子 関西大学フランス語学科卒、株式会社レルネットスタッフ 甲26-④
志太野玻 松尾芭蕉の高弟 甲26-⑤
加藤碧玻 人間環境大学講師、華道家 甲26-⑥
玻都もあ 漫画家 甲26-⑦
蜜宮真玻 漫画家 冬水社 少女漫画「白妙の君 花霞」他の 作家 甲26-⑧
伊藤小玻 日本画家 雅号 甲26-⑨
武石石玻 1884.10.20-1913.5.4.  日本初の墜落死した民間飛行家 甲26-⑩
高橋玻斗子 俳号 甲26-⑪
山本尚玻 華道家 甲26-⑫
大比羅玻智 作家。「或る物語のソナタ」 著者 甲27
玻名城律子 歌手、 CD「美ら島の歌 玻名城律子おきなわを歌う」 甲28
蘇東玻 高校歴史教科書に載っている人物
玻琳王 昔の琉球王 甲26-⑬
・公共の施設などでの使用
名前 詳細 備考
瑠玻展 ・福岡の美術館(福岡アジア美術館、福岡市美術館,石橋美術館)では毎年「瑠玻展」が行われている。
・公立を含む美術館で40年近くにわたって「玻」の字が使われ続けている。
・2008年には「第37回瑠玻展」が石橋美術館で開かれています 甲30-①
玖玻わかれ 広島県八日市市のバス停 甲30-②
玻名城バス停 沖縄県具志頭村玻名城のバス停 甲30-③
唐玻豊 沖縄首里城正殿前の建築物名 甲30-④
玖玻トンネル 広島県八日市市のトンネル
玻名城の郷ビーチ 沖縄県具志頭村玻名城のビーチ 甲30-③
玻里非 ボリビア(国名) 甲30-24
玻座間村 沖縄県竹富島 甲30-25

 ・店舗などの名前
店舗名 所在地など 証拠番号
玻阿瑠 神奈川県横浜市港北区のレストラン 甲30-⑤
石玻工芸舎 神奈川県横浜市港北区 甲30-⑥
天玻苑 富山県高岡市の表具店 甲30-⑦
瑠璃玻 サンドブラスト:京都市東山区のガラス工房 甲30-⑧
茶玻瑠 道後温泉のホテル 甲30-⑨
杏玻蘭巣 大阪 阪神甲子園駅そばの中華料理屋 甲30-⑩
ガラス工房 玻璃 神奈川県足柄下郡湯河原町 甲30-⑪
府玻書道 新谷工芸(078-57-1189)直営教室名 甲30-⑫
玻璃丸 琵琶湖観光船 昭和26年~56年運行 甲30-⑬
麻栗玻 横浜中華街にある雑貨屋 甲30-⑭
玻璃 東京都港区南青山の中華料理屋 甲30-⑮
玻座真内科医院 沖縄県那覇市字字栄原654 甲30-⑯
玻名城公民館 沖縄県島尻郡八重瀬町玻名城36 甲30-⑰
ホットスパー具志頭村玻名城 沖縄県島尻郡八重瀬町具志頭633 甲30-⑱
たねや守山玻璃絵館 滋賀県守山市吉身3-19-15のケーキ屋 甲30-⑲
富岡化学玻璃管製作所 群馬県甘楽郡甘楽町大字善慶寺 甲30-⑳
がらすや(玻璃屋) 長崎県長崎市松が枝町 甲30-21
浄玻璃工芸社 神奈川県横浜市鶴見区江ヶ崎町3-54 甲30-22
たねや八日市玻璃絵館 滋賀県東近江市八日市市東浜町1-41 甲30-23
玻璃家 東京都文京区向丘 甲30-31
玻里 大阪市都島区友淵町 甲30-32
アトリエ玻璃 福岡県宗像市田島 甲30-33
ガラス(玻璃) 福岡県福岡市中央区大名 甲30-34
メンバーズ玻璃 福岡県福岡市博多区中洲 甲30-35
・商品名など
名前 詳細
玻璃音 東京都中央区食器メーカー、ハリオグラスの製品、ガラス製のコーンスピーカー
玳玻天目 日本の国宝展(2003.3.25~5.7.東京国立博物館)で展示された南宋時代の天目茶碗。龍光院所蔵
玻素備前 グラビトン研究所販売の 健康器具兼浄水器
氷玻種 楽天市場出品中のペンダントトップ
中玻茶海 楽天市場出品中の茶器
彩絵玻璃座雛(みやび) 楽天市場出品中の親王飾り 甲30-26
彩絵玻璃座雛(花) 楽天市場出品中の親王飾り 甲30-27
彩絵玻璃座雛(松竹梅) 楽天市場出品中の親王飾り 甲30-28
彩絵玻璃座雛(桜飾り) 楽天市場出品中の親王飾り 甲30-29
彩絵玻璃座雛(花飾り) 楽天市場出品中の親王飾り 甲30-30
・書籍の中の「玻」(一般) 
題名に使用
書籍名 出版社 出版年月日 著者名 証拠番号
瑠璃でもなく、玻璃でもなく
(非公開) 集英社 2008年10月 唯川恵 甲27-②
玻璃色の風 日本文学館 2008年10月 Love 甲27-③
聖玻璃の山 小学館(文庫) 2008年7月 夢枕獏 甲27-④
玻璃真人新記「真言の…」第一部 Hibicore出版 2008年2月 新美宇受女 甲27-⑤
玻璃と剣: スパイラル/ワコールアートセンター 2008年1月 葉山有樹著 甲27-⑥
玻璃の青空 不識書院 2007年12月 平賀冨美子 甲27-⑦
玻璃の空
98000部 文芸春秋 2007年4月 北村薫 甲27-⑧
玻璃[トカゲ] 白地社 2005年9月 奥津ゆかり 甲27-⑩
練上玻璃光 講談社 2005年9月 松井康成 甲27-⑪
玻璃の薔薇 (角川ホラー文庫) 角川書店 2003年10月 五代ゆう 甲27-⑮
彩色玻璃コレクション 朝日新聞出版 2003年6月 増田彰久
藤森照信 甲27-⑯
小説は玻璃の輝き 翰林書房 2000年7月 高橋英夫 甲27-27
玻璃の城 シナリオ対訳 愛育社 2000年6月 工藤則子 羅啓鋭  甲27-28
玻璃の城 愛育社 2000年5月 アレックス・ロー 実川元子 甲27-29
上高地玻璃 プラルト 1999年4月 中村至伸 甲27-30
青き玻璃 短歌新聞社 1998年11月 棟幸子 甲27-31
玻璃の伽藍 雁書館 1997年10月 大湯邦代 甲27-33
聖玻璃の山 (A5) 早川書房 1995年10月 夢枕獏 甲27-34
玻璃の華 そうぶん社出版 1995年4月 吉田美江子 甲27-35
玻璃 (A6) 卯辰山文庫 1995年2月 小石珠子 甲27-36
君が蒼き天涯の玻璃 勁文社 1994年5月 原田千尋 甲27-37
玻璃の柩 白夜書房 1994年1月 嶋田純子 甲27-38
玻璃の蒼天 えんじ句会 1992年11月 高村健一 甲27-38
薄玻璃 北洋社 1992年5月 長谷川純子 甲27-42
玻璃の内 東京美術 1991年7月 池田啓三 甲27-43
小樽玻璃街(がらすのまち)殺人事 件青樹社 1990年7月 関口甫四郎 甲27-44
玻璃 鹿林書房 1990年3月 野間明子 甲27-45
玻璃幻想 石川書房 1990年2月 緒方美恵子 甲27-46
玻璃物語 国書刊行会 1987年6月 双蛇宮 甲27-47
玻璃窓 至芸出版社 1986年10月 山田絹江 甲27-48
玻璃の地誌 書肆山田 1986年9月 浅山泰美 甲27-49
山稜玻璃 時事通信社 1985年11月 三宅修 
串田孫一 甲27-50
桜桃の玻璃 あけぼの社出版 1978年3月 柳瀬万里 甲27-51
玻璃 新星書房 1958年 真鍋美恵子 甲27-52
肝煎以路玻伝書<下巻> 東北歴史資料館 1985年 東北歴史資料館集<12> 甲27-54
肝煎以路玻伝書<上巻> 東北歴史資料館 1984年 東北歴史資料館集<8> 甲27-55
玻璃の家 松本寛大
新撰莬玖玻集 近江八幡市の市指定文化財 室町時代の歌集
武石浩玻と私
本文に使用
題名 出版社 著者 頁 該当文 証拠番号
ふらんす物語 埼玉福祉会 永井荷風 225 玻璃の杯には葡萄の酒が注がれたり 甲28-1
京都桂川殺人事件 徳間書店 木谷恭介 184 ヒロイン「平瀬玻奈子」 甲28-2
若狭恋歌殺 人事件 徳間書店、
又は
広済堂出版 木谷恭介 ヒロイン「平瀬玻奈子」
鎌倉釈迦堂殺人事件 徳間書店、
又は
広済堂出版 木谷恭介 ヒロイン「平瀬玻奈子」
京都細雪殺人事件 徳間書店、
又は
広済堂出版 木谷恭介 ヒロイン「平瀬玻奈子」
京都百物語殺人事件
徳間書店、
又は
広済堂出版 木谷恭介 ヒロイン「平瀬玻奈子」
京都柚子の里殺人事件
徳間書店、
又は
広済堂出版 木谷恭介 ヒロイン「平瀬玻奈子」
京都高瀬川殺人事件
徳間書店、
又は
広済堂出版 木谷恭介 ヒロイン「平瀬玻奈子」
木曽恋歌殺人事件 徳間書店、
又は
広済堂出版 木谷恭介 ヒロイン「平瀬玻奈子」
死なない蛸
「宿命」内 創元社 萩原
朔太郎 青ざめた玻璃天井の光線が いつも悲しげに漂っていた
萩原朔太郎全集
死なない蛸 筑摩書房 萩原
朔太郎 290 青ざめた玻璃天井の光線が いつも悲しげに漂っていた 甲28--3
出雲風土記 登場人物:彦玻瓊王 甲24
桐一葉 坪内逍遥 浄玻璃の鏡
明治バンカラ快人伝 ちくま文庫 武石浩玻
・著作の中の「玻」(児童・ジュブナイル) 
題名に使用
書籍名 出版社 出版年月日 著者名 証拠番号
玻璃(ガラス)の惑星 (ファンタジア文庫) 富士見書房 1998年2月 桜井牧 甲27-32
玻璃色の迷宮 プラパ・ターゼ4(講談社X文庫)(非公開) 講談社 1992年6月 流星香 甲2740
本文に使用
題名 出版社 著者 頁 記載文 証拠番号
台川
「オツベルと象」内 岩崎書店
フォア文庫 宮沢賢治 68 玻璃蛋白石の脈だ 甲28-4
十力の金剛石
「オツベルと象」内 岩崎書店
フォア文庫 宮沢賢治 154 玻璃でたたんだ自分のお部屋 甲28-5
楢の木大学士の野宿「オツベルと象」内 岩崎書店
フォア文庫 宮沢賢治 150
126
77 下等な玻璃蛋白石が
流紋玻璃にも出くわさない
流紋玻璃を探せ 甲28-6
都南の翼
(講談社X文庫
(非公開) 講談社 小野不由美 28 妻の玻娘は  (人名) 甲28-7
十力の金剛石
「ポラーノの広場」内 新潮文庫 宮沢賢治 41 玻璃でたたんだ自分のお部屋
風の万里 黎明の空
(講談社X文庫)
累計(非公開) 講談社 小野不由美 26 どの窓にも玻璃が入っている 甲28-8
蝉の羽 
薬屋探偵妖奇談 高里椎奈 423 玻璃の海風
西遊記 中巻 偕成社 渡辺仙州 訳 46 玉帝の大切にしている玻璃の杯を誤って床に落として 甲28-9
江戸いろはカルタ 瑠璃も玻璃も照らせば光る
西遊記 3 水の巻 理論社 斉藤洋 目次
103 玻璃の杯
玻璃の杯がどれほど値打ちがあるのか 甲28-10
指輪物語
(評論者文庫) 評論社 JRRトールキン ガラドリエルの玻璃瓶 甲28-11
台川
「オツベルと象」内 岩崎書店
フォア文庫 宮沢賢治 68 玻璃蛋白石の脈だ 甲28-12
十力の金剛石
「オツベルと象」内 岩崎書店
フォア文庫 宮沢賢治 154 玻璃でたたんだ自分のお部屋 甲28-12
楢の木大学士の野宿「オツベルと象」内 岩崎書店
フォア文庫 宮沢賢治 150
126
77 下等な玻璃蛋白石が
流紋玻璃にも出くわさない
流紋玻璃を探せ 甲28-12
台川
「オツベルと象」内 岩崎書店
フォア文庫 宮沢賢治 68 玻璃蛋白石の脈だ 甲28-12
・別紙10 著作の中の「玻」(児童・ジュブナイル)  追加分
本文に使用
題名 出版社 著者 頁 記載文 証拠番号
彩雲国物語
    黄梁の夢 角川書店
ビーンズ文庫 雪乃紗衣 277 (―玻璃の箱にでも入ってりゃいいんだ) 甲42-1
彩雲国物語
  紅梅は夜に香る 角川書店
ビーンズ文庫 雪乃紗衣 130 手元がくるって玻璃の窓を突き破り 甲42-2
彩雲国物語
  紅梅は夜に香る 角川書店
ビーンズ文庫 雪乃紗衣 131 硯代と玻璃代と修理代、計上 甲42-2
彩雲国物語  黒蝶は檻にとらわれる 角川書店
ビーンズ文庫 雪乃紗衣 11 淡々としていて、玻璃のようにかたく冷ややかだった。 甲42-3
彩雲国物語
 隣の百合は白
(非公開) 角川書店
ビーンズ文庫 雪乃紗衣 114 玻璃のように感情が消えていく邵可の瞳に映るのは、 甲42-4
天体議会
プラネット・ブルー 河出書房新社 長野まゆみ 114 瞳は玻璃の艶をした漆黒だった 甲42-5
天体議会
プラネット・ブルー 河出書房新社 長野まゆみ 151 羽や玻璃玉が散って歓声が溢れる。 甲42-5
天体議会
プラネット・ブルー 河出書房新社 長野まゆみ 176 玻璃の艶をおびていた。…小石や硝子片を探しているのさ。
(筆者は同じガラスを玻璃・硝子と書き分けて独特の風情をかもし出している)、 甲42-5
他にも、今年の直木賞受賞作品「鷺と雪(甲58)」の本文にも「玻」が使用されている。前述の「瑠璃でもなく玻璃でもなく」「玻璃の天」など、ここ最近より一層見かけるようになってきている。
別表の2にある娩、沌、楕、閠、綸、諄、斡、誼、浬、燎、牒、稟、穰繍、纂、臆、痩、舷、滉、櫂、拶、惺、悌、彗、琥、檎、晄、等が「玻」以上に広く多様されている様子はない。したがって、「玻」も戸籍法が常用平易な文字と定めた別表2と同等かそれ以上に常用平易であった。
しかし名古屋高等裁判所の判断は、平易性については「同じく、構成要素は簡単だが常用平易でない文字もある」、常用性については「「玻」の文字が、一般書又は児童書向けの書物などにおいて必ずしも多用しているとは言えず(4ページ16行目)」「用いられている例も多いとまで認めることはできず(4頁21行目から)」「広く多用しているとまでは認めがたい(4頁22行目は)」「少なくないとはいえないことが確かであったとしても(4頁224行目から)、…広く国民に知られていることの根拠となるものではなく、そこまでの事実は認められない(5頁5行目まで)。」としており、積極的に広くあまねく使われていることを証明することを求めており、別表2にの文字には課されていない過剰な要件を合理的理由もなく「玻」にのみ課すものとなっており、本件名古屋高等裁判所の判断基準は、常用平易の判断において既に人名用漢字として認められてきている文字との整合性を著しく欠くものであり、違憲・無効である。
また、要旨で述べた通り、平成19年3月18日大阪高裁決定の「穹」事件と「祷」事件は、定立された枠組みに沿って審議した後、必要に応じて当該文字の個別の事情について更に審議しており、本件も、前述のような曖昧な基準ではなく(名古屋高裁は基準すら不明だし)同じ枠組みによって審議されるべきものであった。
大阪高等裁判所が示した常用平易性についての基本方針は「検討に当たっては、当該文字を用いた名前が付けられることにより、社会生活において、命名された本人や関係者に不便や支障が生じるか否かの観点、より具体的には、子の名に複雑・難解な、あるいは日常目にすることが比較的稀な漢字を用いたために、本人や関係者が、当該名を記載したり、読解したりすることにおいて、あるいは、口頭で当該名を他者に説明する際、いかなる文字を用いているかを伝達することに困難を感じたり、誤解を生じたり、また、類似する文字と紛らわしく、誤記・誤読につながる等の弊害が生じる可能性ないし蓋然性がどの程度あるか、という観点が考究されるべきもの(民事月報vol.63.5.p.121-123,154)」である。
大阪高等裁判所が定立した検討枠組みは以下の通り。
(1)人名用漢字部会における選定過程においても、出現頻度及び要望法務局数がいずれも基準値を下回ったことから、選定の対象とされなかったものであって、本件文字の常用平易性ないし使用による弊害の有無について、選定過程で個別・具体的に検討された形跡はないもの
(2)本件文字を子の名前として使用した場合、前記立法趣旨に照らして弊害が生じる余地があるか否かという観点からの検討
ア文字の構造、総画数、構成要素、字義、熟語などを考慮し、本件文字について、複雑ないし難解である、あるいは日常目にする機会に乏しく、字義が知られていないなどの観点から弊害が生じることが想定出来るか否か
イJIS第2水準の文字である
ウ文字の画数やその構造の明確さ、部首の汎用性などを含めた平易さ、他者に対する説明伝達の容易さ。
(3)以上のような諸事情を総合考慮し、当該文字を子の名前に使用したとして、戸籍法50条1項が防止しようとする弊害を生じる事態が想定されるか否か
日本は法律によって治められる法治国家である。したがって、同じ内容であるならば、国民はどこの地方裁判所で裁判を受けても、同じ法律、同じ法解釈でもって同じ審判がなされるべきである。
合理的な取り扱いの都合上必ずしも結論が同じにならないものではあるが、本件漢字「玻」が審判手続きに提出された資料、公知の事実などから大阪高等裁判所平成19年(ラ)第486号「穹」と同じ内容同じ基準での検討をするに相当し、また同じ条件を満たすものであることを以下にしめす。
 (比較検討文は、許可抗告の理由書に同じものを掲載のため、省略)

以上の対比で分かる通り、「穹」と「玻」は、提出された証拠及び公知の事実において、決定の差異を生じるだけの合理的根拠は見当たらない。なお、最新の要望法務局数および頻度数調査(2)については、公知の事実と考え資料を提出しませんでした(費用もかかりますから)が、必要なら提出しますのでご連絡ください。
3ページ要旨で述べたとおり、これらの決定日も近接しており、この間に大きな社会通念や国民意識、時代の変化が起こったとは考えられず、その事実も確認できていない。
よってこの二件に限っては、決定に区別を生じるだけの合理的理由はない。憲法第14条1項は法の下の平等を定めており、この規定は事柄の性質に即応した合理的根拠に基づくものでない限り、法的な差別的取扱いを禁止する趣旨であると解すべきことは、最高裁判所の判例とするところであり(最高裁昭和37年(オ)第1472号同39年5月27日大法廷判決・刑集27巻3号265頁)、
合理的根拠なく、名古屋市長に出生届の受理を命じないという決定は、戸籍の取得についての著しい差別的取扱いであり、従って本件名古屋高等裁判所の決定は、憲法第14条平等権について違憲・無効である。


第5.本件名古屋高等裁判所の戸籍法の解釈の憲法第13条
命名権、自由権、幸福追求権の違反について

憲法第13条で保障されている命名権、自由権、幸福追求権、人格権と戸籍法50条1項は、互いに補完しあうことで命名される子の幸福、人格、自由を守るものであり、どちらも欠かすことの出来ないものである。

氏名とは、社会的にみれば、個人を他人から識別し特定する機能を有するものであり、戸籍法50条1項が子の名には常用平易な文字を用いなければならないと定め規制することには一定の合理性がある。
しかし同時に、個人から見れば氏名とは人が個人として尊重される基礎であり、その個人の人格の象徴であって、人格権の一内容を構成するものであり、それに制限を与えるには余程の理由がなければならない。
命名権とは、親が子の名を大切にすることによって、その子の人格と幸福を尊重し、自由に行使することが出来るものである。命名権の源は、命名される子供のものであって、その子に名づける(一般的には)親が、その子から命名権・幸福追求権・自由権・人格権が一体となったものを託されて行使するものである。これらを託された親が、子供の幸福を願い、これから送るであろう人生を思い、親子・兄弟姉妹・家族・親族・社会との関係の中でのその子自身の在り様を思って、その子自身に代わり行使するものであり、自由に行使する権利を有するものである。
 こうして生まれた名は、命名される子の人格的生存に不可欠で、生涯にわたる国民生活の基本になる重要なものである。
戸籍法50条1項は、常用平易の基準は時代によって変わるとして、法務大臣はその職権によって施行規則を何度か見直し、制定当時に比べて、今、大きくその「範囲」を拡げている。添付意見書にもあるとおり、それは時代と共に「制限」の必要性よりも漢字の持つ「唯一無二性」が大きく評価されてきたことでもある。人名は人と人を区別するための単なる記号ではなく、子どもの人生への期待や願望を托すという面があり、表意性の点で漢字が担うその役割は大きいものがあり、漢字でこそ表現できる世界があり、親と子は表現の自由が保障されている。
第3で述べたとおり、どう考えても「玻」よりも明らかに常用平易性に欠ける、少なくとも本件名古屋高等裁判所の審査では常用平易ではないとされる多数の別表2の漢字(戸籍法が常用平易としている)であっても、人名用として認められているのは、その漢字が本来持つ喚起力、伝達力、語としての完結性、唯一無二性を子の名前に用いたいと国民が求めたからに他ならず、そうして人名用漢字の拡大は進んできている。
ましてや2006年「新教育基本法」が半世紀ぶりに改定され、その目標の一つに「自国に誇りをもち尊重しつつ、他国にも敬意を忘れない『日本の伝統・文化を基盤として国際社会を生きる教養ある日本人の育成』」とある。これを受けて新学習指導要領でも「伝統と文化」の教育が明示された。「制限」的な色彩が強かった人名漢字の世界は明治以降の伝統的な表記法とは隔絶した性格でもあった。1981年「常用漢字表」は、「当用漢字表」では示さなかった「康煕字典体」の字体を「明治以降とのつながりをはかるため」として記載するという画期的なものであった。つまり、文字は伝統であり、文化であるという文字観に依拠した漢字表提出であった。人名漢字の「範囲」の拡張にはこの文字観が大きく影響を与えたものであり、今後さらにその文字観は広がり、定着していく(**大学国語教育講座教授 ***先生 意見書より)、この流れの中、命名に限らず漢字の重要性は計り知れない。
したがって命名権・人格権・自由権ならびに幸福追求権の行使を規制する場合、戸籍法50条1項は、それが防止しようとする弊害を生じる事態が明らかなものに限る、緩やかな性質のものであるべきである。
よって、大阪高等裁判所「穹」「祷」判決で述べられているように、当該文字を用いた名前が付けられることにより、社会生活において、命名された本人や関係者に不便や支障が生じるか否かの観点、より具体的には、子の名に複雑・難解な、あるいは日常目にすることが比較的稀な漢字を用いたために、本人や関係者が、当該名を記載したり、読解したりすることにおいて、あるいは、口頭で当該名を他者に説明する際、いかなる文字を用いているかを伝達することに困難を感じたり、誤解を生じたり、また、類似する文字と紛らわしく、誤記・誤読につながる等の弊害が生じる可能性ないし蓋然性がどの程度あるか、という観点が考究されるべきものであ(る。)(民事月報vol.63.5.p.121-123,154)り、戸籍法50条1項はその範囲でのみ規制の効力を持つものである。
本件名古屋高等裁判所は
①常用性については「「玻」の文字が、一般書又は児童書向けの書物などにおいて必ずしも多用しているとは言えず(4ページ16行目)」「用いられている例も多いとまで認めることはできず(4頁21行目から)」「広く多用しているとまでは認めがたい(4頁22行目は)」「少なくないとはいえないことが確かであったとしても(4頁224行目から)、…広く国民に知られていることの根拠となるものではなく、そこまでの事実は認められない(5頁5行目まで)。」としており、常用性の判断において、積極的に広くあまねく使われていることを証明することを求めており、戸籍法50条1項の定める「常用」について合理性を欠き、現在の人名用漢字との整合性の取れない過剰な要件を課すものとなっている。
②平易性については、画数が少なく、読みも類推して読むことも容易で、構成要素も平易であると認めながらも、構成要素が「玻」と同じ王偏であっても平易でない文字があることのみを理由に、「玻」が平易でないと判断しており、この理屈で言うなら人名漢字に加えられた瑠も琉も常用平易ではないことになり、判断理由として合理性のない過剰で現在の人名用漢字との整合性の取れない要件を課している。
③常用平易について「具体的に当該文字を子の名に使用することによって、社会生活上の不便や支障がないかどうかという点が、当該文字を人名漢字として使用することの許否の判断基準となるものではない。したがって、たとえ「玻」を氏に使用している人たちのうちの数人が社会生活上の不便や支障を感じていないものであったとしても、そのことがただちに人名用漢字としての使用が認められるべきことの根拠となるものではない。」と、戸籍法50条の立法趣旨との整合性が取れない判断である。

上記3点を理由に「玻」が常用平易でないとしている原審の判断は、戸籍法50条1項が命名権、人格権、自由権ならびに幸福追求権の行使を規制する場合に明らかにすべき弊害、すなわち当該文字を用いた名前が付けられることにより、社会生活において、命名された本人や関係者に不便や支障が生じるか否かの観点、より具体的には、子の名に複雑・難解な、あるいは日常目にすることが比較的稀な漢字を用いたために、本人や関係者が、当該名を記載したり、読解したりすることにおいて、あるいは、口頭で当該名を他者に説明する際、いかなる文字を用いているかを伝達することに困難を感じたり、誤解を生じたり、また、類似する文字と紛らわしく、誤記・誤読につながる等の弊害が生じる可能性ないし蓋然性がどの程度あるか、という観点が考究されたものではなく、また現在人名用として認められている漢字ならびに戸籍法50条1項の立法趣旨とも整合性の取れない過剰な要件に従って判断されており、従って、この判断でもって命名権、人格権、自由権ならびに幸福追求権の行使を規制することは違憲・無効である。

第6.児童の権利に関する条約7条1項 児童の出生後直ちに登録され、氏名を有し国籍を取得する権利と申し立て中に子が無戸籍にならないための救済策として「名未定」での出生届を出せることを積極的に周知徹底していないことの違反、ならびに同条約第7条2の「国内法及びこの分野における関連する国際文書に基づく自国の義務に従い、1の権利の実現を確保する」ことと、戸籍法第50条2項の「常用平易」判断の枠組みを曖昧なまま放置し、家事審判とその抗告審が延々と継続する状態の違反について

戸籍法50条1項にまつわる裁判は、長期化することを、今回、身をもって知ったが、その間、当該児童が無戸籍児にならないための救済策として「名未定」で出生届をすることが出来、判決に不利になることはないことは、今に至るまで知らなかった。
 また、それが救済策であるという案内もなく、家庭裁判所の受付に、申し立て中の次女の身分について相談したときにも案内はなく、「係争中」の証明書の発行だけだった。
 子の身分を安定させるのは親の義務であり、私たちは出生届を出そうとしたが、このようなことになり、出生届は宙に浮いたままである。
 また、この救済措置に気づき、11月10日に電話にて「今から名未定の出生届けをすると、この抗告の手続きはどうなるか」と名古屋高等裁判所に問い合わせたところ「そういったケースは今までないので分からない。専門家に相談して(民事*部書記官**さん回答)」との回答があり、はっきりとしたことが分からないままで、今も「名未定」の出生届と本件との関連が分からず、届けは出せていない。名未定の出生届けと抗告との関係が分からないままである。
裁判所もしくは戸籍掌管者は、児童の権利に関する条約7条1項 「児童の出生後直ちに登録され、氏名を有し国籍を取得する権利」を守るためには、申し立て中、子が長期間無戸籍の状態になることを回避するために、「名未定」の届けが救済措置としてあることを、積極的に案内する義務がある。それを行わないでいる状態は、児童の権利に関する条約7条1項に違反しており、直ちに、救済措置についての案内をする責任部署と、明確な案内内容を定めることを求める。
また、本件に限らず、戸籍法50条1項にまつわる家事審判がどれも決定するまでに長い時間がかかっていること自体が、児童の権利に関する条約の第7条に違反しており、その原因は戸籍法第50条にある。
児童の権利に関する条約7条によれば「児童は、出生の時から氏名を有する権利」があり、私たちは先に述べたように、次女の出生前より「玻南」と名前を定め、その誕生を待ち、出生と同時に「矢藤玻南」という氏名を与え、周囲にも案内を出し、今日まで次女は「矢藤玻南」として人格を築き、生活してきた。しかし、家事審判とその抗告審が延々と継続している間は、次女を「名未定」あるいは無戸籍にせざるを得ず、次女「玻南」は児童に関する権利条約の7条1項「児童は出生後直ちに登録され、氏名を有し国籍を取得する権利を有する」を阻害されている。その原因は第3.第4.で述べたとおり本件名古屋高等裁判所の戸籍法50条1項についての合理性を欠いた過剰な解釈およびそれに基づく決定、ならびに決定までに時間がかかりすぎること、および同法の定める「常用平易」の検討枠組みを長期にわたり定立してこなかったことである。
あわせてこの本件においては無戸籍の状態、かつての申立て事件の中には「名未定」の状態が、長期間に及んで決定を待っていること、待っていたことは、児童の権利に関する条約7条1項「児童の出生後直ちに登録され、氏名を有し国籍を取得する権利」ならびに同条約第7条2の「国内法及びこの分野における関連する国際文書に基づく自国の義務に従い、1の権利の実現を確保する」に対する違反・怠慢である。


7.結論
 本件名古屋高等裁判所の判断は、常用平易の判断において既に人名用漢字として認められてきている文字との整合性を著しく欠き、過剰な要件を課すものである。また既に定立されている判断枠組みにおいて検討するならば常用平易であると認められる本件当該漢字「玻」を、明確な基準なく認めなかったことは、同時期に判断枠組みに沿って出された判例「穹」「祷」との間で著しく整合性を欠くものであり、憲法14条に違反している。
 また、戸籍法50条の「常用平易」における解釈が、その範囲を超えて合理性のない過剰な要件、および既に人名用と認められている文字との間に整合性を欠く過剰な要件を課すものであって憲法13条に違反している。
 また、本件のような申立ての間、長期間にわたり当該時の身分を「無戸籍」もしくは「名未定」などの、著しく不安定な状態にし、またその状態を防ぐための積極的手段を講じてこなかったことは、人格権ならびに児童の権利に関する条約第7条を侵害しており、違憲・無効である。
以上の次第であるから、原決定は、憲法第14条および憲法第13条に違反した上、「児童の権利に関する条約」第7条にも違反するから、無効である。しかも、これは裁判に影響を及ぼすことが明らかな違反であるから、原決定は最高裁判所において速やかに破棄されるべきである。

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