2009年11月25日水曜日

戸籍法と人名用漢字施策の歴史① 戸籍法の争点

そもそも、今回の裁判って、何に基づいて行われているのかって思う方もいらっしゃるでしょう。

まず、今の人名用漢字は以下の法律によって決まっています。
戸籍法50条1項「子の名には常用平易な文字を用いなければならない」
        2項「常用平易な文字の範囲は法務省令でこれを定める」
この同条2項による委任をうけた規則60条
「戸籍法50条2項の常用平易な文字は
                 ①常用漢字表に掲げる漢字 
                 ②別表第2に掲げる漢字 
                 ③平仮名、カタカナ」

私たちの申立てはどこに根拠があるかというと、
戸籍法121条「不服の申立て」「戸籍事件について市町村長の処分を不当とするものは、家庭裁判所に不服の申立てをすることが出来る」 です。

「そりゃあ、不服はあるだろうけど、法律で決まっているんだから、わがまま言ってもねえ」というご意見も多数いただきました。そうですよね。わがままはいけません。・・・が、

規則60条は、この法の委任に基づき、常用平易な文字を限定列挙したものと解すべきであるが、法50条2項は、子の名には常用平易な文字を用いなければならないとの同条1項による制限の具体化を規則に委任したものであるから、規則60条が社会通念上、常用平易であることが明らかな文字を子の名に用いることのできる文字として定めなかった場合には、法50条1項が許容していない文字使用の範囲の制限を加えたことになり、その限りにおいて、規則60条は、法による委任の趣旨を逸脱するものとして違法、無効となるものと解される。そして、法50条1項は、単に、子の名に用いることのできる文字を常用平易な文字を限定する趣旨にとどまらず、常用平易な文字は子の名に用いることができる旨を定めたものというべきであるから、上記の場合には、戸籍事務管掌者は、当該文字が規則60条に定める文字以外の文字であることを理由として、当該文字を用いて子の名を記載された出生届けを受理しないことは許されず、裁判所は、審判、決定手続きに提出された資料、公知の事実などに照らして、以上の点について審査を遂げ、当該文字が社会通念上明らかに常用平易な文字と認められるときには、当該戸籍事務管掌者に対し、当該出生届の受理を命ずることができるものというべきである
(最高裁判所平成15年12月25日第三小法廷決定(民集57巻11号2562ページ)

という判例があるのです。簡単に要約すると、「常用平易な文字って言うのは常用漢字、平仮名、カタカナ、別表2の漢字だけど、別表の2は、あくまでサンプルで、常用平易な文字が全部載っているわけじゃないから、もし、明らかに常用平易な漢字があるなら、その漢字の使用を家庭裁判所がその裁量権で認めなさいね」ってことです。
 ちなみに、最高裁判所の判例は、法律に匹敵するくらいの拘束力があるので、次から、この判例を用いて法律論を展開できるらしいです。たいてい、名前の文字の裁判には上の言葉が出てきます。

 ということで、私たちは「「玻」は明らかに常用平易なんだから、家庭裁判所さん、認めてくださいね。」と申立てをしたのですが、ここでの争点は、「『玻』は明らかに常用平易かどうか」ってことになります。

 

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