2009年11月25日水曜日

戸籍法と人名用漢字施策の歴史③ JIS第一水準と頻度数調査と要望法務局数

一体、戸籍法が定める「常用平易」の基準って、何?
今の別表2の漢字って、どんな基準で選ばれたの?って思いませんか?

だったら、やっぱり人名用漢字施策の歴史を見てみないと。
そのためには、まずは、前出の最高裁判所の判例をもう少し・・・
法50条1項が上記のような定めをしているのは、従来、子の名に用いられる漢字にはきわめて複雑かつ難解なものが多く、そのため命名された本人や関係者に、社会生活上、多大の不便や支障を生じさせたことから、子の名に用いられるべき文字を常用平易な文字に制限し、これを簡明なものとすることを目的とするものと解される。
 そして、同条2項が、法務省令で常用平易な文字の範囲を定めることとしているのは、当該文字が常用平易であるか否かは、社会通念上に基づいて判断されるべきものであるが、その範囲は必ずしも一義的に明らかでなく、時代の推移、国民意識の変化等の事情によっても変わりうるものだからであり、専門的な観点からの検討を必要とするものである上、上記の事情の変化に適切に対応する必要があることなどから、その範囲の確定を法務省に委ねる趣旨である。

(最高裁判所平成15年12月25日第三小法廷決定(民集57巻11号2562ページ)

 簡単に要約すると、
子供の名前にあんまり難しい文字を使うと、本人も周りの人も読めないし書けないしで、不便だし困るから、常用平易な文字にしなさいと、法50条は決めました。でも、常用平易な文字って、時代や国民感覚が変われば変わるし、専門家の意見も聞いて、法務大臣がその権限で決めていいよ。
ということです。

では、具体的には、いつ、どの様にして、どんな基準で決められたのでしょう?
では、そこのところ、大阪高等裁判所(H20.3.18決定「穹」および「祷」事件)の裁判官が述べている部分をほぼ丸写しします。ちょっと、読むの耐えられないって方は、後で要約するのでそこを読んでいただいてもOKですよ。

(2)旧戸籍法における子の名に用いられる文字についての取り扱い
 旧戸籍法においては、届出書の記載について、略字または符号を用いてはならず、字画明瞭なることを要すると定められていたのであり(同法28条1項、55条)、子の名に使用する文字についての法律上の制限はなかった。

(3)戦後の「当用漢字表」の制定に伴う法50条の新設
ア 従来、わが国において用いられる漢字は、その数が甚だ多く、その字体及び字種も複雑多岐にわたるため、国民の教育上又は社会生活上の不便には多大なものがあった。そこで、戦後、これを制限し、国民生活能率を上げ、文化水準を高めることを目的として、昭和21年11月16日、1850字を掲げる「当用漢字表」(昭和21年内閣告示第32号)が制定された
イ 当用漢字は、「法令・公用文書・新聞・雑誌および一般社会で、使用する漢字の範囲を示したもの」とされ、固有名詞については「法規上そのほかに関係するところが大きいので、別に考えることとした」として、人名・地名を対象外としたため、直接には子の名に用いられる漢字の取り扱いの基準となるものはなかった。
 しかし、従来から子の名に用いられる漢字にはきわめて複雑かつ難解なものが多く、そのため、命名された本人や関係者に社会生活において多大の不便や支障を生じさせていたことから、当用漢字表を制定するにいたったという上記の国語施策は、子の名に用いる漢字の取り扱いにも及ぼすことが妥当であるとされ、昭和23年1月1日に、旧法を全面改正の上施行された戸籍法においては、上記の通り、50条1項で「子の名には常用平易な文字を用いなければならない。」と規定し、同条2項で常用平易な文字の範囲の定めを命令(司法省令)に委任した。そして、これを受けて制定された規則60条(当時)において、人名に用いられるべき漢字は当用漢字に限るものとされた。

(4)「人名用漢字別表」及び「人名用漢字追加表」の制定
ア 上記の通り、制定当初の規則60条は、子の名に用いることのできる漢字について、従来からの伝統や特殊な事情に配慮せず、当用漢字のみに制限していたのであるが、そのことについて国民からの大きな批判を招き、国民各層から人名用漢字の範囲の拡大が要望された。
イ 上記要望を受けて、国語審議会(文部大臣〔当時、現在では文部科学大臣〕の諮問機関)において人名用漢字の問題が国語政策上重要な問題として取り上げられ、同審議会内に設置された「固有名詞部会」における審議の結果、昭和26年5月14日、法務総裁及び文部大臣に対し、当用漢字の外に、従来人名意用いられることが多かった漢字など92字について人名に用いても差し支えないものとする「人名漢字に関する建議」が行われ、内閣は、同月25日、上記92字を掲げた「人名用漢字別表」(昭和26年内閣告示第1号)を定め、法務総裁は、同日付で規制を一部改正し(同年法務省令第97号)、「人名用漢字別表」に掲げる漢字を規則60条に定める文字に追加した。
ウ その後も人名用漢字の範囲拡大の要望は続き、昭和49年3月、法務大臣が民事行政審議会に対して戸籍制度に関して当面改善を要する事項について諮問したことにより、同審議会において人名用漢字の問題についても審議され、その結果、同審議会が「子の名に用いる文字について、当面は『当用漢字表』・『人名用漢字別表』による制限方式を踏襲しながら、必要に応じその『人名用漢字別表』の『漢字を追加する等の従来の措置を継続することとし、なお、国語審議会における今後の検討を待って対処するものとする』旨の答申をしたことを踏まえて、法務大臣の諮問機関として設置された「人名用漢字問題懇談会」において、法務局及び地方法務局を通じて全国の市町村」の戸籍窓口に対して実施した調査結果等も踏まえながら、人名用漢字の当面の取り扱いについて検討がなされた。
 その結果、同懇談会から、新たに28字を人名用漢字として追加するのが相当である旨の報告を受け、従来の経緯を踏まえて国語審議会から人名用漢字の追加について了承を得た上で、昭和51年7月30日、上記28字を掲げた「人名用漢字追加表」(昭和51年内閣告示第1号)を定めると同時に、規則60条を一部改正し(同年省令代37号)、「人名用漢字追加表」に掲げる漢字が規則60条に定める文字に追加された。

(5)常用漢字表の制定とそれに伴う新たな「人名用漢字別表」の制定
ア 常用漢字表の制定
(ア)国語審議会においては、昭和47年1月以降、文部大臣の諮問に基づき、国語施策の改善の一環として、当用漢字に含まれる漢字の字種・字体等の問題について総合的な審議を行い。昭和56年3月23日、「法令・公用文書・新聞・雑誌・放送など一般の社会生活で用いる場合の漢字使用の目安」として「常用漢字表」を作成して文部大臣に答申し、内閣は、同答申にかかわる常用漢字表をほぼ全面的に採用し。同年10月1日、1954字を掲げる「常用漢字表」(昭和56年内閣告示第1号)を制定した。
(イ)常用漢字表は、当用漢字表に掲げられた1850字をすべて継承した上で、新たに95字(うち、7字は人名用漢字別表に、1字は人名用漢字追加表に掲げられていたもの)を追加した。
イ 新たな「人名用漢字別表」の制定
(ア)常用漢字表は固有名詞をその対象外としており、人名用漢字の取り扱いについては、従来国語審議会が関与してきたが、戸籍等の民事行政との結びつきが強い問題であることから、人名用漢字別表の処置などを含め、今後、その取り扱いは、常用漢字表の趣旨を十分参考にすることを前提として、法務省に委ねることとされた。
(イ)そこで、法務省においては昭和54年1月25日、法務大臣の諮問機関である民事行政審議会に人名用漢字の取り扱いについて諮問した。
  審議の結果、同審議会は、昭和56年5月14日「①子の名に用いる文字の取り扱いは、基本的に現行の取り扱い方式(制限方式)を維持すべきである。② 常用平易な漢字の範囲は、常用漢字表に掲げる漢字ならびにそれ以外で現行の人名用漢字別表及び人名用漢字追加表に科掲げる漢字に一定の漢字を追加すべきである。③ 字体については、原則として1字種につき、1字体とすることとし、例外として、当分の間、一定の字種につき二字体を用いることができる(許容字体)。」などとして、新たに54字を人名用漢字に追加すべきである旨の答申をし、これを受けて、法務省は、「人名用漢字別表」及び「人名用漢字追加表」に掲げられていた漢字(計120字)から、常用漢字表に採用された8字を除く112字に、上記54字を加えた合計166字を掲げる新しい「人名用漢字別表」を規則別表第二とし、同年10月1日、常用漢字表の制定と同時に規則60条を改正し(昭和56年法務省令第51号)、法50条の2項の常用平易な文字として「1 常用漢字表に掲げる漢字(括弧書きが添えられているものについては、括弧の外のものに限る。) 2 別表第2〔人名用漢字別表〕に掲げる漢字 3 片仮名又は平仮名(変体仮名を除く。)」と定めた。

(6)国民一般の要望や裁判例を受けた人名用漢字の追加
ア 昭和56年10月の規則60条の改正後相当の期間が経過するに伴い、国際化の進行等社会の諸事情勢の変化、国民における漢字、あるいは子の名に対する好みの変化などから、人名用漢字の増加を求める要望が高まり、さらには、制限の撤廃を求める意見も見られるようになった。
  そこで、平成元年2月13日、法務大臣は、民事行政審議会に対し、規則60条の取り扱い等について諮問し、その結果、平成2年1月16日、「①子の名に用いる文字の取り扱いについては、制限方式を維持する。 ② 子の名に用いる常用平易な漢字については、現行の施行規則60条2号の漢字に同年4月1日、規則別表に新たに118字を追加する改正を行った。(平成2年法務省令第5号)。
  このとき追加された漢字は、市区町村の戸籍事務窓口において取り扱った制限外の漢字の調査の結果(昭和50年7月及び昭和53年11月実施)から得られた字種のすべてを基礎資料とし、加えて、社会生活上多用されているとみられるJIS第一水準の漢字(その意義は後述する。)の字種にまで拡大してこれらの中から人名用漢字としてふさわしい漢字を選択することとし、同審議会の委員全員により2回にわたりアンケート調査を実施し、その結果を参考として最終的な審議を行った結果として選定されたものである。
イ その後、平成9年11月18日、那覇家庭裁判所において、人名用漢字以外の漢字である「琉」の字を用いた子の出生届を不受理処分としてことに対する不服申し立て事件について、同出生届を受理することを命じる旨の審判(家裁月報50巻3号46頁)がされたことを契機として、同年12月3日、民事行政審議会への諮問・答申を経ることなく、規則60条の一部改正により、規則別表に「琉」の1字が追加された(平成9年法務省令第73号)。
ウ 次に、平成15年12月25日に最高裁判所によってされた前記平成15年決定(この決定は、子の名に人名用漢字以外の漢字である「曽」の字を用いた出生届の追完届けの提出について、戸籍事務管掌者が不受理処分をしたことに対する不服申し立て事件に関するもので、前記の一般的判示の下で、規則60条は、社会通念上明らかに常用平易な文字である「曽」を人名用漢字として定めていない点につき、その限りにおいて戸籍法による委任の趣旨を逸脱するものとして違法、無効であるとし、上記追完届けの受理を命じた原審の判断を是認したものである。)を契機として、法務省は、平成16年2月23日、規則別表に「曽」を追加する改正を行った(平成16年法務省令第7号)。
エ 更に、人名用漢字以外の漢字を子の名に用いた出生届の不受理処分に対する不服申し立て事件について、横浜家庭裁判所などにおいて、社会通念上明らかに常用平易な文字である旨の判断が示された「獅」「駕」「毘」及び「瀧」の各字について、法務省は、同年6月7日に「獅」の字を、同年7月12日に「駕」「毘」及び「瀧」の字を、それぞれ施行規則別表に追加する改正を行った(同年法務省令第42号、同49号)。

旧戸籍法には略字や符号はだめ、字ははっきり書いてね、とあるだけです。子供の名前に制限はあ 
りませんでした。
・日本人の使う漢字って漢字は、半端じゃなく多いし、同じなのにちょっとずつ違う字が沢山ありすぎて 国民の教育でも社会生活でも、とんでもなく不便だったから、戦後、これを制限して、国民生活能率と文化水準をあげるために、昭和21年11月16日、1850字の「当用漢字表」を制定しました。でも、この段階では、まだ子供の名前に使える文字の制限はありませんでした。
・が、しかし・・・難しいも字が多くてみんな不便だから、ってことで昭和23年1月1日に、今の形が整いました。旧法を全面改正して50条1項で「子の名には常用平易な文字を用いなければならない。」と規定し、同条2項で常用平易な文字の範囲の定めを命令委任、規則60条・・・でも、人名に用いられるべき漢字は当用漢字だけでした
・が、しかし・・・国民から苦情が出たんですね。今でおおよそ3000字が人名用に使えます。でも、毎年10件くらいの不服申し立てが出ます。1850字だけじゃ、もしかするとあなたの名前も使えない文字だったかも知れませんよ。・・・それはさておき、苦情要望が出たので、国語審議会「固有名詞部会」で審議し、昭和26年5月25日当用漢字の外に、従来人名に用いられることが多かった漢字など92字の「人名用漢字別表を規則60条に追加しました。
・それでも足りないからって言う声が多くて昭和51年7月30日28字の「人名用漢字追加表」定めると同時に、規則60条も、「人名用漢字追加表」を追加しました。同じように
 1981年10月1日、常用漢字に採り入れられた8字を削除し、54字を追加して166字となる
 1990年4月1日、118字を追加し284字となる
 1997年12月3日、1字(「琉」)を追加し、285字となる
 2004年2月23日、1字(「曽」)を追加し、286字となる
 同6月7日、1字(「獅」)を追加し、287字となる
 同7月12日、3字(「毘」「瀧」「駕」)を追加し、290字となる
 同9月27日、許容字体からの205字と追加された488字を加え、全部で983字となる
 2009年4月30日、「祷」「穹」の2字を追加し、985字となる
と、次々増えています。もちろん、その影には報われなかった申立てが数知れずあることは間違いありません。

 じゃあ、どの基準で選んでるの?ってことになりますが、それも大阪高裁の決定書から引きます。

(7)JIS漢字コード
ア JIS漢字コード(「情報交換用符号化漢字集合」)とは、コンピューター等による情報交換において扱われる文字の種類(文字集合)と、各文字をデーターとして処理する際の符号化表現について、財団法人日本規格協会が日本工業規格(いわゆるJIS規格。日本工業標準調査会により審議・制定され、経済産業省(旧通商産業省)により認定されている。)の一つとして規定しているものである。
イ 日本で最初に規定された公的な符号化文字集合の規格であるJIS X0208は、俗に「JIS第1水準・第2水準」などとも呼称されるもので、昭和53年に制定された。
 (ア)その第一次規格(JISC 6226-1978.正式名称「情報交換用漢字符号系」。「旧JIS漢字」と俗称されることもある。)は、非漢字453字、第1水準漢字2965字、第2水準漢字3384字の合計6802字の文字集合であった。
 漢字が第1水準、第2水準という二つの水準に振り分けられたのは、規格制定当時、コンピューターが普及・発達しておらず、規定された漢字すべてを搭載することが難しかったため、より利用頻度の高い漢字を第1水準に収める形を採用したためである。
 すなわち、JIS第1水準漢字は、一般国語表記用として、合計37の漢字表に採用されている漢字(計1万2136文字)の中から、おおむね、「①37の漢字表のうち28表以上に採用されているもの(約2000字)を採用する。②37の漢字表に含まれている漢字数について、地名、人名に関するもの(国土行政区画総覧、日本生命人名漢字表)(A群)は、その他一般に関する漢字表(B群)と大きく異なる特徴を示したことから、漢字表を上記2群に分け、それぞれの漢字を出現頻度などを基に並べ、上位728字を取り出す、③A群及びB群に共通する字(494字)、A群のみに含まれる字(234字)及びB群のみに含まれる字(234字)を採用する。」という手順で選定されたものであり、常用漢字はすべてこの中に含まれる。
 また、同第2水準漢字には、地名・人名、行政情報処理及び国語専門分野といった個別分野用として、主要4漢字表(情報処理学会標準漢字コード表、行政管理基本漢字、国土行政区画総覧、日本生命人名漢字表)のいずれかに現れ、第1水準漢字集合に収められなかった漢字すべてが収められた。
 (イ)その後、昭和58年の第二次規格(JISX 0208-1983.改正当時の名称はJISC 6226-1983だが、後にJISの情報処理部門の新設に伴い、規格番号が「JISC 6226」から「JISX 0208」へと変更され、以降「JISX 0208改定年度」の形式で呼ばれることとなった。「新JIS漢字表」と俗称されることもある。)、平成2年の第三次規格(JISX0208-1990。正式名称は「情報交換用漢字符号」。「人名用漢字別表」の改正に伴い、第2水準漢字に2字を追加し、登録次数が6879字と変更。)への改正を経て、平成9年に現行の第四次規格(JISX0208:1997.正式名称は「7ビット及び8ビットの2バイト情報交換用符号化漢字集合」。非漢字524時、第1水準漢字2965字、第2水準漢字3390字の計6879字)への改正がされた。

ウ 更に平成12年には、JISX 0208:1997で企画する符号化漢字集合を拡張する規格として、JISX0213では、現代日本語を符号化するために十分な文字集合を提供することを目的として、一般に使われる漢字でJIX0208に収録されていないものを出現範囲の広さなどを基準に選定・追加し、非漢字659時のほか、第3水準漢字として、JISX0208-1983で字体が大きく変更された29字及び常用漢字表において括弧に入れて掲げられた字や人名用漢字許容字体を含む1249字、第4水準漢字として2436時が追加され、合計1万1233字、第1水準漢字から第4水準漢字までの総漢字数は1万0040字となった。

(8)平成16年9月の規則改正
ア 法制審議会における審議及び答申
(ア)審議に至る経緯
 平成2年3月に118字を追加する改正が行われて以来、人名用漢字について大幅な改正はなされていなかったが、以来、相当期間が経過し、その間に人名用漢字の範囲拡大についての要望が多数寄せられ、また、平成15年12月25日に最高裁判所の前記決定(平成15年決定)が出されたことなどの情勢の変化等に鑑み、平成16年2月10日法務大臣は法制審議会に対し、人名用漢字の範囲の見直し(拡大)について諮問を行い、同3月から同審議会内に設置された人名用漢字部会において審議が行われた。
(イ)審議の内容
a 戸籍法50条1項は採用している人名用漢字についての制限方式は、前述の平成2年改正の際の議論において ①子に複雑かつ難解な名が付けられると社会生活において本人や関係者に不便や支障を生じさせることとなる。 ② 現行戸籍法施行から相当年数が経過し、人名用漢字の制限法式もかなり定着しており、これを覆すとかえって混乱を生じる。 ③ 子の利益のために、また、日常の社会生活上の支障を生じさせないために、他人に誤りなく容易に読み書きができ、広く社会に通用する名が用いられることが必要である等の理由で制限方式をとることとされたが、これを改めるほどの社会情勢の変化はない。④ 制限方式を撤廃すれば、戦後行われた日本語の平易化の目標を崩すことにもなりかねない、 ⑤戸籍事務取り扱い上も、制限を撤廃した場合、出生届けに複雑かつ難解な漢字による名が記載されると、究極的には検索の容易でない康熙辞典に依拠せざるを得なくなって審査が困難になる上、手書きによらなければならなくなるため、事務の能率化・機械化に支障を来し、更には誤った字を記載する危険性があって、誤字の発生原因となる。⑥ 現在、子の名に用いる文字については、字種のみならず字体も制限しているが、これを撤廃した場合、一字種に何字体もの漢字が用いられ、社会生活上も戸籍事務取り扱い上も混乱を生じさせるおそれがある。⑦ 制限方式を撤廃した場合、今後戸籍事務の処理をコンピューター化するに当たっての障害となることも予想される上、現に稼動している住民基本台帳のコンピューター処理に支障を来すことにもなりかねないなどの諸点が指摘されていたところ、これらの点については、現時点でも変化はないとの指摘から、子の名には常用平易な文字を用いなければならないとする人名用漢字に関する制限方式(戸籍法50条1項)は維持すべきものとされた。
b 字種の選定について
(a)検討すべき対象漢字
 法50条1項の規定上、「人名にふさわしい」という要点は、特段求められておらず、また前記平成15年決定においても、「社会通念上明らかに常用平易と認められるか否かという点に重きが置かれていたこれまでの人名用漢字追加の議論とは異なり、今回は、戸籍法の規定にできるだけ忠実に「常用平易」な漢字を選定する方向で審議をするとの基本方針で、検討すべき対象漢字の大枠として、まずは、JIS第1漢字水準及びJIS第2水準の漢字(全6355字)のうち、常用漢字表、人名用漢字別表及び同許容字体表に掲げる漢字をのぞいたもの(JIS第1水準の漢字2965字のうち770字、JIS第2水準の漢字3390字)を対象として、出版物上の出現頻度と、全国の市区町村の窓口等に寄せられた人名として具体的に使用したい旨の要望数を集計した。
 検討の対象漢字を基本的にJIS第1水準及び第2水準の漢字としたのは、JIS漢字は、コンピューター等における情報交換に用いる文字の符号化を規定したもので、昭和53年の制定時から存在する第1水準及び第2水準の漢字は社会一般において尊重され、幅広く用いられているものであること、及び、今後も、JIS漢字は、情報通信手段においてより一層その重要性・汎用性を増すものと考えられることによるものであった。
 そして、JIS第1水準及び第2水準の漢字の上記の選定方法に鑑みて、第1水準漢字については原則として常用平易性が認められるであろう観点から検討を行い、第2水準の漢字については、常用平易性を個別に検討し、常用平易性の認められるものについてのみ人名用漢字に追加するのが相当であるとされた。
 他方、JIS第3水準漢字及び第4水準の漢字は、大半のコンピューターに搭載されているとは言い難いものであったため、原則として検討対象とされなかった。
(b)「常用平易な」漢字の選定作業
 上記の基本方針のもとにおける「常用平易」な漢字の選定に当たっては、凸版印刷・読売新聞こよる(「による」の誤りと思われるが、民事月報のまま記載する)「漢字出現頻度数調査(2)」(平成12年、文化庁。調査対象漢字総数は。凸版印刷3330万1934字。以下「頻度数調査(2)」という。)の結果を活用することとされた。これは、同調査のうち凸版印刷で扱った書籍を対象としたものは、同種調査の中でも最大規模のものであったから、人名用漢字の審議においても、この調査結果を活用することがもっとも合理的であると判断されたためである。 そこで、現在、人名用漢字に含まれていないJIS第1水準の漢字計770字から、上記調査に現れた出版物出現頻度に基づき、出現順位3012位以上(調査対象書籍385誌における出現回数が200回以上)の漢字503字を選定し、それ以外のJIS第1水準の漢字及び第2水準以下の漢字については、上記出現頻度や要望の有無・程度(平成2年から平成15年1月までに全国各市区町村窓口に届出(その後、不受理又は撤回)・相談された要望漢字について、管掌法務局を一単位とした合計法務局数)等を総合的に考慮して、①JIS第1水準の漢字のうち、出現頻度順位3013位以下(出現回数199回以下)であっても、要望法務局数が6以上(50局の10分の1を超える要望数)の18字(桔、雫、漣、浬、埜、檎、椛、珊、豹、禾、湘、桧、侠、哩、祢、孜、樟、娃)、② JIS第2水準の漢字のうち、出現順位3012位以上であって、要望法務局数が6以上の12字(煌、絆、遙、橙、萬、曖、刹、檜、巳、凉、蕾、徠)、③JIS第2水準の漢字のうち、出現順位3012位以上であって、要望法務局数が8以上の17字(苺、凛、琥、珀、萌、稟、凰、禮、櫂、實、麒、釉、榮、槇、珈、堯、圓)、④ JIS第2水準の漢字のうち、出現頻度順位4010位以下であって、要望法務局数が11以上の字のうち、出現回数が付されていなかった1字を除く8字(惺、昊、逞、梛、羚、晄、驍、俐)、⑤ JIS第3水準の漢字のうち、出現頻度順位3012位以上であり、その異字体がJIS第1水準に掲げられている20字の合計75字が選定された(以上合計578字となる)。

 かなり簡単に言うと、
 凸版印刷や読売新聞の調査で、出現頻度が高かったものから順に、JIS第一水準、第二水準、・・・第4水準として、PCや携帯などの文字変換用に載せる優先度の順位を日本工業規格が付けました。
その中から、まず第一水準を選び出してOKとし、第二水準は出現頻度数調査で200回以上出現するものを選び、次にその中から、要望法務局数(この字を名前に使いたいという要望が法務局に上がった数)多いものを選んで、名前にふさわしいものを選んだってことです。


 ちっとも簡単ではありませんでした。間違ってたらごめんなさい。

 この基準は、ある意味合理的です。以前にご紹介しました「戸籍統一文字」は確かJIS第2水準まで網羅しているはずですから。それに、たいていのPCや携帯電話にも、標準装備されています。それでもさっき挙げた変換できない文字は、どうなっているのか私には分かりません。

 でも、あれ??って思いませんか? まず最初に、頻度数調査で上位に入っていることが大前提なんです。だから、人名用漢字には変な文字も沢山あるんですよね。
 たしかに、それは常用・・・だが・・・???そこに入らなかったら、「常用平易」ではないのかしら?

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